最新記事
新興市場

「不透明感高まる」新興国市場にトランプ次期大統領の影

2024年11月11日(月)21時13分
メキシコシティの証券取引所

11月11日、市場関係者は来年の新興国市場について、長年の世界的な利上げに終止符が打たれ、ゴルディロックス(適温)相場が期待できると予想していたが、米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことを受けて、先行き不透明感が大きく高まっている。メキシコシティの証券取引所で6月撮影(2024年 ロイター/Daniel Becerril)

市場関係者は来年の新興国市場について、長年の世界的な利上げに終止符が打たれ、ゴルディロックス(適温)相場が期待できると予想していたが、米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことを受けて、先行き不透明感が大きく高まっている。

市場では大統領選の開票結果を受けて、ドル高が進行。次期トランプ政権による関税の引き上げや、財源の裏付けのない歳出拡大、米利下げペースの鈍化に対する懸念が浮上しており、一部の新興国通貨・債券の重しになっている。


 

欧州最大の資産運用会社アムンディの新興国市場グローバルヘッド、イェルラン・シジコフ氏は「当社は今年、新興国資産に前向きで、パフォーマンスも好調だが、来年のことを考え、現地通貨建てとハードカレンシー建ての双方で慎重な姿勢を取る必要がある」と指摘。共和党が大統領選と上院選に加え、下院選でも勝利すれば「形勢が少し変わってくるだろう」と述べた。

国際金融協会(IIF)のデータによると、新興国株式・債券への純資金流入額は2022年には事実上ゼロだったが、今年は9月時点で2500億ドル弱に回復。昨年通年の1770億ドルを上回った。

パインブリッジ・インベストメンツのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、アンダース・フェールゲマン氏は「大統領選前は新興国市場について楽観論が多かった」とし、新興国と先進国の成長格差が10年ぶりの高水準にあることを指摘した。

JPモルガンの新興国ハードカレンシー建て債券指数は今年のリターンが6%前後。現地通貨建て債券は小動きで推移している。

アリアンツ・グローバル・インベスターズは、16年の大統領選ではトランプ氏が予想外の勝利を収め、新興国通貨が矢面に立たされたが、今回も同じような状況になる可能性があると指摘。

フェールゲマン氏も、トランプ氏の勝利で中国にプレッシャーがかかっているほか、ポーランドズロチやハンガリーフォリントといった新興国通貨が、貿易依存度の高さやトランプ関税を受けて、リスクに見舞われるとの見方を示した。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中