最新記事
温室効果ガス

カナダ、温室効果ガスの大幅排出削減案...石油・ガス産業「生産減・税収減」と反発も

2024年11月5日(火)13時28分
カナダのアルバータ州原油掘削施設

11月4日、カナダ政府は、石油・ガス業界を対象に2030年までに温室効果ガスの排出量を19年比で35%低く抑える規制案の素案を発表した。写真は原油掘削施設。カナダのアルバータ州で3月撮影(2024 ロイター/Todd Korol)

カナダ政府は4日、石油・ガス業界を対象に2030年までに温室効果ガスの排出量を19年比で35%低く抑える規制案の素案を発表した。26年以降、排出量報告を義務付け、その後は排出量を順守しない生産者に罰則を科すことが柱。

カナダは石油生産で世界第4位、天然ガスで第6位の資源国。政府の見通しでは、排出量に上限に設けても30―32年にかけての石油とガスの生産量は19年比16%増加し、国内総生産(GDP)の押し下げ効果は0.1%にとどまる。ただ、石油・ガスの業界団体は設備投資マインドに響きかねず、生産量が減って雇用を奪い、税収減につながる恐れがあると反発している。


 

トルドー政権は国内全体で温室効果ガスの排出量を30年までに40―45%減らす国際公約を掲げる。そのため国内で排出量が最も多い石油・ガス産業への脱炭素化への取り組み強化が不可欠。素案を巡り、業界関係者も含めた公的な手続きに則った意見聴取を9日に開始し、来年1月8日まで実施。最終案は来年に公表する予定だ。

素案によると、キャップ・アンド・トレード方式による排出量取引制度を導入する。排出削減で優れた成果を出した石油・ガス企業を高く評価する一方、排出量が多い企業には削減を促す仕組みとする。生産者は26年以降、排出量報告が義務付けられ、30―32年は排出量順守の最初の3年間と位置付けられた。政府はこうした規制を守らない生産者に科す罰則を策定する方針だ。

ウィルキンソン・エネルギー・天然資源相によると、排出量の削減は大半がメタンガスによる大気汚染抑制と、オイルサンド採掘などで発生する二酸化炭素(CO2)回収によって実現する見通しだ。

トルドー政権はこれまで、石油・ガス業界に対して排出量を30年までに19年比で最大38%削減することを求める方針を掲げていた。ウィルキンソン氏は、生産者が技術的に達成可能な水準について協議を繰り返した結果、35%低く抑えることで決着したと説明した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中