唯一無二の文章を書くために注意する1つのポイント...「としたもんだ表現」のバイアス【新聞記者の文章術】
小林秀雄の問い:美しい「花」がある、「花」の美しさといふ様なものはない/jeonsango-pixabay
<「お決まりの言い回し」は「思い込み」から生まれる。先入観や偏見から自由になり、オリジナルの言葉で伝えるには?>
朝日新聞記者で作家の近藤康太郎氏のもとには、文章力を磨くために若い記者が集まる。私にしか書けないものを、書く。プロに限ったことではない。誰もが文章でコミュニケーションをとる今日、「ちょっといい」と思われる文章を書くためにはどうするか。
近藤氏が、「独自の視点」を得る訓練で必ず最初に教えるのが「常套句をなくす」というテクニックだ。常套句は文章を凡庸にするだけでなく、人の思考を奪い、さらには世界を息苦しくするからだ。どういうことか。「いい文章」の定義からはじまり、プロにも通用する25の文章技術を解説する『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』(CCCメディアハウス)より取り上げる。
※本記事は前後編の後編(前編:朝日新聞名文記者が「いい文章」を書きたい新人に最初に必ず教えること【ベストセラー文章術】)
どこまでも自分の目に忠実に書け
美しい「花」がある、「花」の美しさといふ様なものはない。 (「当麻」)
そう書いたのは小林秀雄だ。短い随筆なのでライター志望者は必読だ。
ある門番や馬車の姿を、ほかのすべての門番、馬車とどう違うのか。それをわたしに描いて、わからせてくれ。フランスの作家フロベールは、弟子のモーパッサンに、そう教えた。
問題は表現しようと思うすべてのものを、だれからも見られずいわれもしなかった面を発見するようになるまで、十分長くまた十分の注意をこめて眺めることである。どんなもののなかにも、まだ探求されてない部分というものがある。 (「ピエールとジャン」)
これは、わたしの言葉で言い表すと「正確に、どこまでも自分の目に忠実に書け」ということになる。