最新記事
市場経済

投資家が「円売り解消」に殺到...日銀「タカ派姿勢」で局面変化

2024年8月2日(金)13時13分
円紙幣のサンプル

8月1日、現在の劇的な円高は、最も強力な味方を引き連れている。写真は円紙幣のサンプル。都内の貨幣博物館で7月代表撮影(2024年 ロイター)

現在の劇的な円高は、最も強力な味方を引き連れている。モメンタムだ。円を38年ぶりの安値に押し下げてきたトレンド追随型ファンドが手のひらを返すと、猫も杓子も円安トレードから足を洗い始めた。

円はドルに対して3週間で8%上昇し、市場参加者はそのスピードに不意を突かれた。


 

相場が落ち着いていた時期に円のショート(売り)ポジションを組んでいたファンドや、トレンドに従って取引する「コモディティ・トレーディング・アドバイザー(CTA)」などは、相場の反転で損失を被ったり、少なくとも新たなリスク計算を迫られたりした。

1月に1ドル=140円だった円相場は、7月には161円まで下がっていたが、それが急転換したからだ。

8月1日の相場は150円前後で、円のショートで得た含み益の半分が吹き飛んだ計算だ。しかも相場のボラティリティーが高まったことで、ショートポジションのリスクは日増しに増大している。

日米中銀の政策会合が終わり、金利の方向性が反対であることが確認された今、レバレッジを駆使する市場参加者の次の動きが為替市場を動かし、それはおそらく円の一段高につながると、アナリストやディーラーは言う。

UBSのマクロストラテジスト、ジェームズ・マルコルム氏は「1ドルが152円を割り込むと、CTAにとって多くの節目が破られ始め、CTAは単にドルのロング(買い)を減らすだけでなく、ドル/円のショートに転じ始める」と説明。こうしたトレンド追随型の投資家が市場の転換から同じシグナルを読み取って動くことで、相場の動きがますます増幅されるとの見方を示した。

円金利は2000年代初頭からゼロ近辺に抑えられてきたため、円売りは長年にわたり世界屈指の「おいしい」為替取引だった。円がじりじりと下がり、為替のボラティリティーが低い局面では、なおさらだった。

しかし今、円金利が低く、しかも安定し続けるとの想定が突如として覆りつつある。

公式統計によると、日本の投資家は今年に入って外国株から差し引き2兆2000億円を引き揚げた。この間に外債に流れた差し引き6212億円の投資よりも大きな額だ。

同時に、日銀は4カ月の間に2度利上げを実施した上、円売りポジションにとってのセーフティーネットだったイールドカーブコントロール政策を廃止した。

マコーリーのストラテジスト、ギャレス・ベリー氏は「過去2年間の円安は構造的シフトではなかったと、今でも確信している。循環的な性質の売りであり、完全に逆転可能なものだ」と語った。同氏はドル/円が2025年末までに125円に下がると予想している。

米市場規制当局のデータによると、円の売り越しは足元で86億1000万ドルと、約7年ぶりの高水準だった4月から40%減っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中