最新記事
BOOKS

「賢さをつくる」ことはできる...知っておくべき「頭のよさ」のメカニズムとは?【具体と抽象】

2024年8月9日(金)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
Be Smartのイメージ

頭のよい人とは「具体と抽象の往復運動が得意な人で、往復運動には3パターンしかない

<「頭のよさ」には3パターンしかない。賢くなるには3パターンを理解することからはじまる。ではその3パターンとは>

「頭がよい人」と言われると、どんな人を連想するだろうか? 「理解力がある人」「知識量がある人」「論理的な人」「頭の回転が速い人」「発想が豊かな人」とその定義はまちまちで、定義をいくら集めても「頭のよさ」を説明するには十分ではないことに気付く。では、頭がよいとは何だろう?

日本教育研究所の代表を務める谷川祐基氏は著書『賢さをつくる頭はよくなる。よくなりたければ。』(CCCメディアハウス)で、「頭のよさ」を簡潔に定義したうえで、頭をよくする方法を詳しく解説している。

いわく、思考とは「具体化と抽象化の往復運動である」。そして、頭のよい人とは「具体と抽象の往復運動が得意な人である」。しかも、往復運動はたった3種類しかないと言う。どういうことか? 

◇ ◇ ◇

「具体」と「抽象」の距離が長い:「頭のよさ」の要素①

いわゆる頭のよい人とは、ときに常人が思いつかないようなアイデアをひねり出す。これは普通の人よりも《左右》の「移動距離」が長いせいだ[編集部注:本書では《左》に行くほど「具体」、《右》に行くほど「抽象」を表す。図参照]。普通の人が大阪から東京に行って帰って満足しているところを、東京を遥かに越えてサンフランシスコまで行ってくるので、より多くの知見を得られる。

『賢さをつくる』より「具体」と「抽象の関係

具体的なことを《左》、抽象的なことを《右》に配置する。「具体」と「抽象」は上下関係ではなく、対等な関係だ

《左》の世界である目の前の小さな行動を決めるときも、できるだけ《右》の世界、つまり全体的で長期的なことを考えてから決めたほうが思慮深い人と呼ばれる。《左右》の距離があまりに長いとき、普通の人には意味不明の行動に見えることがある。

あの聖書のフレーズを「具体」と「抽象」で説明すると

キリスト教の聖書には「右の頰を打たれたら、左の頰をも差し出しなさい」という言葉がある。これはイエス・キリストが実際に言った言葉とされている。しかし、殴られたら反対の頰も差し出せというのだから、非常に不合理な行動に見える。

この言葉を実行しているキリスト教徒にも出会ったことがない。いままでのアメリカ大統領は全員キリスト教徒のはずだが、彼らの外交政策を見ていると、どちらかと言えば「やられたらやり返せ」ばかり行っている印象だ。

「右の頰を打たれたら、左の頰をも差し出しなさい」というキリストの教えは、現実的な日常や日々の感情、つまり《左(具体)》の世界では合理的でないし、実行している人もほとんどいない。

この教えは、抽象化して《右(抽象)》の世界で解釈すると多少の合理性が生まれる。日常生活やその場の感情といった《左》の視点ではなくて、「社会制度」や「道徳」といった大きな《右》の視点に移動することによってだ。道徳や社会制度の面から見ると、この教えはたとえば「暴力に対して暴力で対抗しても問題は解決しない」といった解釈ができる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独クリスマス市襲撃、容疑者に反イスラム言動 難民対

ワールド

シリア暫定政府、国防相に元反体制派司令官を任命 外

ワールド

アングル:肥満症治療薬、他の疾患治療の契機に 米で

ビジネス

日鉄、ホワイトハウスが「不当な影響力」と米当局に書
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 5
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 6
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 7
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 8
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 9
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 10
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 7
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 8
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 9
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中