サプライチェーンが持つ脆弱性の打開のカギは企業幹部の「インセンティブ改革」にあり
Failure to Deliver
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<コロナに次ぐ「次なるショック」がグローバル企業を待ち受ける。グローバル・サプライチェーンの持つリスクは現在の資本主義経営の構造的欠陥にあった>
新型コロナのパンデミックは世界中のさまざまな面に警鐘を鳴らした。コロナ禍のようなショックに直面して物流に混乱が生じるグローバル・サプライチェーンの脆弱さも露呈した。
こうしたリスクとその原因を、ニューヨーク・タイムズ紙のグローバル経済担当記者ピーター・S・グッドマンは新著『世界的な物流危機リスク──グローバル・サプライチェーンの内幕(How the World Ran Out of Everything: Inside the Global Supply Chain)』で探っている。
ジャーナリストのポール・ローデスがグッドマンに話を聞いた。
──執筆の動機は?
私はロンドン在住で、ブレグジット(英EU離脱)の記事を数多く書いていた。その影響の現れ方についても書こうと思い、ブレグジットが完了して関税などの障壁が復活した際にイギリス中の輸入業者に電話したら、障壁もひどいが輸送も危機的状況だと言われた。
輸送の混乱についてはブレグジットの観点では分からなかった。
掘り下げてみると、実は輸送の乱れはコロナ禍の影響によるものだと気付き、(必要な物を必要なときに必要なだけ生産・供給する)ジャスト・イン・タイム(JIT)生産に注目するようになった。
物不足の原因は大抵、企業が長年利益を増やそうと在庫を減らし、サプライチェーンの回復力を低下させてきた点にあると直感したからだ。
──政治もしくは規制の失敗か、それとも資本主義が陥りがちな失敗の1つか?
従来の資本主義の失敗だ。私は資本主義には賛成だ。私たちは資本主義がもたらす成長を好む。ダイナミズムを、技術革新を好む。だがもちろん、規制当局はここ数十年よりもはるかに大きな役割を果たす必要がある。
私たちは自分の運命を、利益を最大化する一握りの企業に任せたも同然だ。その手の企業は総じて消費財の価格を下げるのはかなりうまい。ある種の効率化もかなりうまいが、その結果、私たちはショックに弱くなる。
今回もそうだった。パンデミックのさなかに防護服が底を突いた。人工呼吸器も医療機器も底を突いた。乳児用のミルクが手に入らなかった。病院は必要な薬を入手できなかった。これらは民主政治の失敗だ。
私たちは自分たちの運命を企業幹部に委ねている。企業幹部は株主に利益を還元する義務があるが、株主の利益は必ずしも社会的な利益と一致しない。この企業独り勝ちのシステムは、間違いなく規制の失敗だ。