最新記事
ビジネス

パリ五輪を契機に「ノンアル」市場のトップを狙う「コロナビール」...攻勢に出るABインベブの勝算

2024年7月27日(土)16時02分
ノンアルコールビール「コロナ・セロ」

7月25日、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は五輪協賛企業として積極的に販促活動を展開し、新発売の「コロナ・セロ(Corona Cero)」をノンアルコールビール市場世界一の座に押し上げようとしている。写真はコロナ・セロの缶。シウダーフアレスで24日撮影(2024年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

<国際オリンピック委員会と最高位スポンサー制度の契約を結んだABインベブ。新発売ノンアルビール「コロナ・セロ」で世界一の座を狙う>

ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は五輪協賛企業として積極的に販促活動を展開し、新発売の「コロナ・セロ(Corona Cero)」をノンアルコールビール市場世界一の座に押し上げようとしている。ただ、今のところコロナ・セロは首位を走る「ハイネケン0.0」に大きな差をつけられている。

ABインベブはコロナ・セロのブランド強化に向けて、地域ごとにブランドを展開していた従来の戦略を転換。1月に国際オリンピック委員会(IOC)と最高位スポンサー制度「TOPプログラム」の契約を結んだ。


ABインベブのマーケティング責任者であるマルセル・マルコンデス氏は、五輪の協賛企業になることでコロナ・セロの販売を拡大する基盤が手に入り、より積極的なキャンペーンが可能になる、と意義を強調した。

ABインベブは契約の一環として、五輪をイメージしたパッケージでコロナ・セロを販売するほか、40カ国余りでテレビとインターネットを使った広告キャンペーンを展開。さらに、コロナ・セロの名を冠した競技のハイライト番組をおよそ15カ国で毎日放送する予定だ。

マルコンデス氏は「ゲームの主導権を握る。コロナ・セロをノンアルコールビール市場のトップに立たせるつもりだ」と語る。

もっとも、コロナ・セロは多くの市場で新規参入者。急成長するノンアルコールビール市場で競合ブランドとの戦いが避けられない。

ノンアルコールビールはメーカーにとって売上高に占める比率こそ小さいが、経営戦略上重要な製品だ。新たな市場を広げ、健康志向の高まりを背景としたアルコール消費量減少の影響を和らげることができるからだ。

<高い利益率>

コンサルティング会社ファーストキーコンサルティングのシニアアドバイザー、ジョージ・クロフト氏によると、ノンアルコールビールは利益率が高めになる傾向がある。初期投資が必要で、生産コストもやや高いが、アルコール飲料のように高い税率を課せられることがない。

コロナ・セロの最大のライバルは、2023年に欧州連合(EU)と米国で首位だったハイネケン0.0。他の大手メーカー、小規模な独立系醸造メーカーも力を入れている。

ABインベブの株主であるアビバ・インベスターズのポートフォリオマネージャー、エド・ケヴィス氏は、ABインベブは法人客向けの販売アプリを持っていることが利点だと指摘する。取引先はこのアプリやABインベブのデジタルプラットフォームを通じて五輪の無料チケットを手に入れることができる。

<契約は高額>

ABインベブは五輪のスポンサー料の金額を明らかにしていない。ただ、スポーツマーケティングを手掛けるインフロントのシニアバイスプレジデント、マイケル・ウィッタ氏によると、こうした契約の金額は通常1000万ドル単位だという。

ABインベブの契約はパラリンピックを含め、ロサンゼルス大会が行われる2028年まで。同社のマルコンデス氏は、ビール市場で高い成長を続ける「コロナ」ブランドの強みを活かしたいと話す。

カナダでは、発売から2年程度で売上高と販売量でプレミアムノンアルコールビール市場のトップに立ったという。

酒類販売を手掛ける英LWCドリンクスの幹部は、コロナ・セロが英国で急成長しているとし、「ハイネケンは以前ほど支配的な立場ではない」と語る。

ABインベブに投資しているアラン・グレイのポートフォリオマネージャー、ジテン・ピライ氏は、急成長市場では必ずしもブランド同士が競争を迫られることはないとしつつ、ABインベブは強力なブランドと巨大な流通インフラを保有しており、かなりの挑戦者だと指摘。「競合する新手企業の規模が大きい場合、市場で先行していることによる優勢性はそれほど大きくない」と今後に期待を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中