日本企業の「業績進捗率」に注目集まる...30%超なら「買い」目線
堅調な小売業績から思惑波及も
日経平均への寄与度が高いグロース寄りのハイテク銘柄のうち、電子部品ではAI(人工知能)関連需要への思惑がある。米アップルやマイクロソフトなどは、ネットワークサーバーでなくスマホやPCといった端末でAI処理する「エッジ(末端)AI」に力を入れており、関連部品の需要拡大が見込まれている。
ゴールドマン・サックスは3日付リポートで、村田製作所やTDKなど関連銘柄の目標株価を引き上げた。電子部品各社は、円安による押し上げも見込まれる。
国内の半導体関連株への円安効果は、為替の扱いの違いに応じて異なりそうだ。岩井コスモ証券の斉藤和嘉シニアアナリストは「東京エレクトロンなど前工程の装置メーカーは円建て中心に取引しており、ドル建ての比率が高いディスコやアドバンテストの方が円安メリットがある」とみる。
AIブームを反映した装置需要や先端投資の盛り上がりも注目される。欧米の大手の半導体メーカーの投資は今年後半から来年前半にかけて盛り上がるとみられている上、半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)の1―3月の投資が低調だったとして「4─6月以降、増えてくるはず。明確にポジティブな見通しが確認できるかが重要」と岩井コスモの斉藤氏は話す。
バリュー株の面からは、日銀の追加利上げ観測を背景に銀行株や保険株の下値の堅さが継続しそうだ。自動車は、円高転換への警戒感はくすぶるものの、米国の利下げがはっきりするまで基調的な円安は継続し、業績が支えられるとみられている。
国内消費関連株は、賃上げによる消費拡大、値上げによる売上拡大といったインフレの好循環がみられるかが決算でのポイントになる。三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長は、先立つ小売決算を踏まえて「その兆しはありそうだ」とみている。 高島屋の幹部は6月29日の決算説明会で「国内消費では、富裕層だけでなくマスマーケットについても伸びが見えてきた」と消費の広がりを説明した。国内顧客は4月時点から物価と賃金の好循環をある程度見込んだ計画としており「ほぼ想定通り」という。 業績予想を上方修正した背景として高島屋は「現在の円安が急激に円高に振れることは考えにくい」との見方を示し、インバウンド売り上げの想定を引き上げた。「中国本土の売り上げの伸長が顕著であり、ここにはまだ伸びしろがある」との見立てを示した。
4―6月決算の企業でも「小売だけでなく、鉄道、宿泊、外食、コスメ、レジャーなどでインバウンド効果や、株高などによる資産効果、賃上げの効果への前向きな見通しが増えてくるかどうか確認したい」と三木証券の北沢氏は話している。
4万2000円視野、定着はまだ先か
足元の株価上昇モメンタムを考慮すると、好決算が確認されれば日経平均は4万2000円も意識されてきそうだ。
PERが足元の17倍程度を維持する場合、日経平均が4万2000円に達するには、1株当たり利益(EPS)が4―5%高まる必要がある。SMBC日興証券の5月20日時点の調べでは、会社予想ベースの純利益は今期0.2%減と、会社側が見通しに慎重だった様子がうかがえる。一方、市場の予想は5.1%増となっている。
4―6月決算内容が市場予想に沿ってくるなら、一段の株高への思惑は高まりそうだ。ただ、りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは、瞬間的に上値を試すとしても、勢いだけの上昇では高値での定着は難しいとみている。仮に第1四半期の数字が良かったとしても「それだけで通期の増益まで全部織り込んでしまうには心もとない」との見方だ。
もっとも、仮に上昇が一時的にとどまっても「元の木阿弥というわけでもない」という。上値が伸びた方が、下値も切り上がってくるとして「今度は4万円が下値めどになり、値固めが進むのではないか」とみている。
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