最新記事
日本経済

日本企業の「業績進捗率」に注目集まる...30%超なら「買い」目線

2024年7月8日(月)19時42分

堅調な小売業績から思惑波及も

日経平均への寄与度が高いグロース寄りのハイテク銘柄のうち、電子部品ではAI(人工知能)関連需要への思惑がある。米アップルやマイクロソフトなどは、ネットワークサーバーでなくスマホやPCといった端末でAI処理する「エッジ(末端)AI」に力を入れており、関連部品の需要拡大が見込まれている。


 

ゴールドマン・サックスは3日付リポートで、村田製作所やTDKなど関連銘柄の目標株価を引き上げた。電子部品各社は、円安による押し上げも見込まれる。

国内の半導体関連株への円安効果は、為替の扱いの違いに応じて異なりそうだ。岩井コスモ証券の斉藤和嘉シニアアナリストは「東京エレクトロンなど前工程の装置メーカーは円建て中心に取引しており、ドル建ての比率が高いディスコやアドバンテストの方が円安メリットがある」とみる。

AIブームを反映した装置需要や先端投資の盛り上がりも注目される。欧米の大手の半導体メーカーの投資は今年後半から来年前半にかけて盛り上がるとみられている上、半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)の1―3月の投資が低調だったとして「4─6月以降、増えてくるはず。明確にポジティブな見通しが確認できるかが重要」と岩井コスモの斉藤氏は話す。

バリュー株の面からは、日銀の追加利上げ観測を背景に銀行株や保険株の下値の堅さが継続しそうだ。自動車は、円高転換への警戒感はくすぶるものの、米国の利下げがはっきりするまで基調的な円安は継続し、業績が支えられるとみられている。

国内消費関連株は、賃上げによる消費拡大、値上げによる売上拡大といったインフレの好循環がみられるかが決算でのポイントになる。三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長は、先立つ小売決算を踏まえて「その兆しはありそうだ」とみている。 高島屋の幹部は6月29日の決算説明会で「国内消費では、富裕層だけでなくマスマーケットについても伸びが見えてきた」と消費の広がりを説明した。国内顧客は4月時点から物価と賃金の好循環をある程度見込んだ計画としており「ほぼ想定通り」という。 業績予想を上方修正した背景として高島屋は「現在の円安が急激に円高に振れることは考えにくい」との見方を示し、インバウンド売り上げの想定を引き上げた。「中国本土の売り上げの伸長が顕著であり、ここにはまだ伸びしろがある」との見立てを示した。

4―6月決算の企業でも「小売だけでなく、鉄道、宿泊、外食、コスメ、レジャーなどでインバウンド効果や、株高などによる資産効果、賃上げの効果への前向きな見通しが増えてくるかどうか確認したい」と三木証券の北沢氏は話している。

4万2000円視野、定着はまだ先か

足元の株価上昇モメンタムを考慮すると、好決算が確認されれば日経平均は4万2000円も意識されてきそうだ。

PERが足元の17倍程度を維持する場合、日経平均が4万2000円に達するには、1株当たり利益(EPS)が4―5%高まる必要がある。SMBC日興証券の5月20日時点の調べでは、会社予想ベースの純利益は今期0.2%減と、会社側が見通しに慎重だった様子がうかがえる。一方、市場の予想は5.1%増となっている。

4―6月決算内容が市場予想に沿ってくるなら、一段の株高への思惑は高まりそうだ。ただ、りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは、瞬間的に上値を試すとしても、勢いだけの上昇では高値での定着は難しいとみている。仮に第1四半期の数字が良かったとしても「それだけで通期の増益まで全部織り込んでしまうには心もとない」との見方だ。

もっとも、仮に上昇が一時的にとどまっても「元の木阿弥というわけでもない」という。上値が伸びた方が、下値も切り上がってくるとして「今度は4万円が下値めどになり、値固めが進むのではないか」とみている。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプショック
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中