最新記事
中国経済

中国消費回復に暗雲...冴えなかった大型商戦、成長目標達成も不透明に

2024年6月25日(火)19時38分
北京でベルトコンベアーに流れる宅配便を仕分けする作業員ら

6月25日、中国の大型ネット通販セール「618」が期待外れに終わったことを受け、小売業者の目先の見通しや景気の先行きに暗雲が生じている。写真は北京でベルトコンベアーに流れる宅配便を仕分けする作業員ら。12日撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

中国の大型ネット通販セール「618」が期待外れに終わったことを受け、小売業者の目先の見通しや景気の先行きに暗雲が生じている。

先週まで実施された今年の618セールは売上高が初めて減少し、既に厳しい価格競争を強いられている小売業者への圧力が強まっていることが浮き彫りになった。


 

電子商取引(EC)大手JDドット・コム(京東商城)の創設日である6月18日にちなんで名付けられた同セールは、11月の「独身の日」に次ぐ大型セールで、家計の消費を示す重要な指標とみられている。

両イベントはかつて中国の消費主義を象徴し、通販サイトやブランド各社に確実な売り上げ増加をもたらした。アリババが最後に独身の日の売上高を公表した2021年には、期間中の売り上げが845億4000万ドルに達した。

一方、今年の618では消費者に支出してもらうのがいかに難しいかが示された。

ナティシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアヘレロ氏は「中国人の消費は基本的にセールやクーポンに集中している。618セール期間中に支出しないなら、他にする時はない」と述べた。

コロナ禍以降、節約傾向にある消費者の支出を促すため小売業者が年間を通じて値引きを実施していることも、大型セール期間中の販売伸び悩みの一因となっている。昨年の独身の日セールの売上高は2%増にとどまった。

こうした値引きはJDドット・コムやアリババ系の「天猫(Tモール)」と「淘宝網(タオバオ)」から低価格プレーヤーの「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」などに消費者が流れるのを遅らせているものの、個人消費喚起にはつながっていない。最近の四半期決算でアリババの国内EC部門は4%増収にとどまった。

投資家の期待もさえず、アリババの株価は年初から約5%、JDドット・コムは3%超、それぞれ下落している。

だが、さらに大きな懸念材料は22年から低迷が続く消費者心理だ。

バンク・オブ・アメリカの最新の中国消費者調査によると、6月の消費者信頼感はさらに悪化した。

今後6カ月間に支出を増やすと回答した人の割合は45%と、4月の55%から低下した。また、今後6カ月間に収入増加を見込んでいる人は31%にとどまり、4月から10ポイント低下した。

「エベレスト・コマース」

グローバルブランド十社余りのネットストアを管理するカンフー・データのジョシュ・ガードナー最高経営責任者(CEO)によると、中国のECは618と独身の日前後に売上高が大きなピークに達することから「エベレスト・コマース」と呼ばれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、再選なら政府効率化委員会設立へ マスク

ワールド

仏首相にバルニエ氏、最高齢 外相やEU首席交渉官な

ビジネス

米政権、日鉄・USスチール合併に懸念 中国の過剰供

ビジネス

米利下げ開始でも現金同等資産からの資金流出には時間
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 2
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 3
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻ってきた車の中に「複数の白い塊」...悪夢の光景にネット戦慄
  • 4
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 5
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 6
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 7
    世界に400頭だけ...希少なウォンバット、なかでも珍…
  • 8
    トランプ参謀は共和党のキングメーカー(?)で陰謀…
  • 9
    グレタさん、デンマークで身柄拘束...ガザ反戦デモに…
  • 10
    大学の都市部への偏在が、日本の地域格差をさらに助…
  • 1
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 2
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクドナルド「ハッピーセット」おもちゃが再び注目の的に
  • 3
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 4
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 5
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 6
    無数のハムスターが飛行機内で「大脱走」...ハムパニ…
  • 7
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 8
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 9
    再結成オアシスのリアムが反論!「その態度最悪」「…
  • 10
    小池都知事は「震災時の朝鮮人虐殺」を認める「メッ…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中