テレビ・映画に加え、「第3次ストリーミング戦争」でネット配信も不調...ハリウッドに「大収縮」の危機
TDコーエンによれば、大半のストリーミングサービスでは値上げの一方で新作コンテンツの配信は減少しており、ストリーミング業界の長期戦略に対する懐疑的な見方が膨らんでいるという。
リアリティー番組ではなく台本のあるシリーズ番組の総本数は、過去最高だった2022年の633本に比べて急減するとみられている。ハリウッドにおけるストライキと支出削減が重なって、昨年の制作本数は落ち込んだ。市場調査企業アンペアアナリシスのデータによると、2023年に米国で公開されたシリーズは481本にとどまった。
アンペアによると、市場首位のネットフリックスでさえ、台本のあるシリーズ番組の配信本数は2022年から2023年にかけて3分の1以上も減少した。ネットフリックスは第4・四半期に新規加入件数が過去最高となり、ストリーミングサービスとしては高い収益性を誇る。同社にコメントを要請したが回答は得られなかった。
ロイターの取材に応じた業界幹部らは、今後数年のうちにストリーミングサービスでの制作本数はさらに減少し、300本台になる可能性があると語った。
国内の映画興行成績は、2024年も引き続き俳優と脚本家によるストライキの影響を受け、今年広範囲で公開される映画は2023年の約100本に対して90本にとどまるだろうとモフェットネーサンソンはみている。実績のない新作ストーリーやキャラクターによる映画作りが難しい状況のもと、2024年の米国における映画興行収入は80億ドル、つまり2023年に比べて10%、2019年に比べて30%の減少になると予想されている。
<「新世界秩序」>
業界幹部らによれば、テレビ・映画産業は減速中だ。アップルTVプラスのドラマ「フォー・オール・マンカインド」や、同じくテレビドラマの「アウトランダー」製作にも名を連ねたロナルド・D・ムーア氏のような一流プロデューサーによる企画であっても、開発責任者たちはなかなかゴーサインを出そうとしない。
製作予算も縮小している。時価総額3兆ドルを誇るアップルのように景気の良い親会社のもとにあるアップルTVプラスでさえ例外ではない。
視聴者の取り込みに失敗した番組は、以前よりも早々に打ち切りになっている。画期的なグラフィックノベルを原作に、オスカー受賞経験者であるミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンの2人を起用したディズニープラスの「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」シリーズもその1つだ。
あるベテランのテレビエージェントは、シーズンが短縮され、1シーズンあたりのエピソード数も減少した状況を「新世界秩序」と呼ぶ。
フォックスは、主力ドラマ1本にかける予算を1話あたり1000万ドルから削減し、450万ドルとすることを検討中だ。ディズニーではボブ・アイガーCEOが「物言う株主」の攻勢を浴び、開発責任者はさらに厳しい吟味の対象となっている。
著名なタレントマネジャーの1人は「次にどう動くべきか、誰もがいささか神経質になっている」と語る。