脱炭素だけでなく「エネルギー安全保障」の観点からも世界が注目...「3種の電池」の新ソリューション
設備の稼働当初はなかなか自家発電率が上がらず、7割程度で足踏みしていたと、加藤氏は振り返る。「前例のない取り組みだけに、実際に稼働させてみないと分からないことも多かった。ちょっとした雲の動きで想定通りに発電できなかったり、工場側の電力需要の変化に追いつけなかったりと、想定通りにはいかない状況も出てきた」。
そうした課題に直面しながらも、実証データを積み重ねることで自家発電率は98%を超えているという。「天候の予測情報を精度高く得られるようにしたことや、工場側の電力需要予測情報をもらい需要の予測精度を高められたことで、今はほぼ100%に達している」と、加藤氏は言う。
さらには「3つの電池を組み合わせてここまで実際の環境で使用しているケースは世界でもあまりない。ノウハウを蓄積し先行者メリットを生かしていきたい」と意気込む。一般企業に加え行政や研究機関など国内外からの関心も高く、実証開始からの1年半で、700件以上の視察があり、うち58件が海外企業だったという。
来年は英国でRE100ソリューションの実証施設を展開
草津拠点でのトライアルに手応えを得たパナソニックでは、来年秋に新たなRE100ソリューションの実証施設を英国で展開する。電子レンジなどの製造を行うパナソニック マニュファクチャリング イギリス(PMUK)でRE100ソリューションを導入、事業活動で消費するエネルギーを100%再エネで賄う予定だ。
PMUKがある英カーディフの気象状況や電力事情に応じた電力需給運用を検証するのに加え、水素発電時に発生する熱を暖房や給湯にも活用することで、さらなる効率化を図るという。
「脱炭素化、そして地政学的なエネルギー安全保障等の観点から英国をはじめ欧州では水素エネルギーへの関心は高い。一方で水素を組み合わせた電源システムへの認知はまだそれほど広がっていない部分がある。今後はドイツでも実証施設稼働を検討し、欧州での水素関連ビジネスの拡大を目指していきたい」(加藤氏)
パナソニックでは、水素関連の事業機会として、2030年段階での水素関連の事業機会を約6兆円規模(燃料自動車関連を除く)と算定している。まずはRE100ソリューションに代表される分散型エネルギーパッケージの領域で、1000億円規模の市場創出を狙っていく構えだ。
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