最新記事
中国経済

2024年、習近平が迫られる究極の選択 債務膨張か低成長か

2023年12月25日(月)15時24分
ロイター
北京の集合住宅建設現場

中国は昨年末に新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」を解除したが、その後の景気回復は期待外れだった。北京の集合住宅建設現場で2022年7月撮影(2023年 ロイター/Thomas Peter)

中国は昨年末に新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」を解除したが、その後の景気回復は期待外れだった。このことは、数十年にわたる目覚ましい経済成長の根幹に疑問を突きつけており、政府は来年以降、「債務を増やすか、低成長に甘んじるか」という究極の選択を迫られるだろう。

ゼロコロナ政策が解除されれば、消費者はこぞってショッピングモールに押し寄せ、外国からの投資は再開し、工場はフル稼働して土地入札と住宅販売も安定する──。当初の期待はこうだった。

ところが現実には、中国の消費者は万が一の事態に備えて貯蓄し、外国企業は資金を引き揚げ、工場は西側諸国からの需要減退に見舞われ、不動産開発業者はデフォルト(債務不履行)を起こしている。

この展開は、中国の成長モデルに長年疑問を呈してきたエコノミストの見方をある程度裏付けている。中には、中国経済を日本のバブル崩壊と「失われた数十年」になぞらえるエコノミストもいる。

中国経済の「懐疑派」は、中国は10年前に建設主導から消費主導の成長モデルに切り替えるべきだったのに、それを怠ったと主張している。この10年、債務は経済成長をしのぐペースで膨らみ、地方政府と不動産企業が返済に苦慮する水準に達した。

政策当局者は今年、消費を押し上げ、経済の不動産セクター依存を減らすと約束。銀行に対しては、不動産から高性能製品を作る製造業へと、貸し出しをシフトするよう指導した。

しかし、債務一掃と経済再構築に向けた具体的かつ長期的なロードマップは依然として描かれていない。

中国がどのような選択を採るにせよ、人口縮小と高齢化、そして西側が対中ビジネスへの警戒感を強めているという地政学的環境を考慮に入れる必要がある。

何が問題なのか

2023年の中国の成長率は5%程度と、世界経済全体をしのぐペースとなりそうだ。しかしその裏に潜むのは、国内総生産(GDP)の40%以上を投資が占めるという実態だ。これは米国の2倍であり、投資の大きな部分が非生産的であることを意味する。

つまり多くの国民は成長を実感していない。若者の失業率は6月に21%を超えた。当局はそれ以来、若年層失業率の発表をやめ、物議を醸している。

税制
日本のモデルは「合理的」。安定財源として期待される「たばこ税」はどうあるべきか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米11月ISM非製造業総合指数52.1に低下、価格

ワールド

米ユナイテッドヘルスケアのCEO、マンハッタンで銃

ビジネス

米11月ADP民間雇用、14.6万人増 予想わずか

ワールド

仏大統領、内閣不信任可決なら速やかに新首相を任命へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求可決、6時間余で事態収束へ
  • 4
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 5
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 8
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない…
  • 9
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 10
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中