300社以上を見たVC語る 「成長する経営者は無茶ぶりに感謝している」
写真はイメージです Tirachard Kumtanom-Shutterstock
<成長を目指す上で必要な経営者マインドには、4つの共通点がある>
ウナギの稚魚を水槽にいれて運ぶと、水槽が揺れるストレスのせいで、その多くが死んでしまいます。しかし、天敵であるナマズを入れておくと、輸送時の揺れよりももっと強いストレスである生命に対する危機感が勝り、生存率が上がるそうです。
人間も、適度なプレッシャーやストレスは生命力を育み、通常以上の成果を生み出すことがあります。
実際に生きている社会は多様性に満ちており、天敵も多く存在し、温室育ちが環境変化に弱いのは当然のことになります。生き残りをかける、という意味では企業経営も自然に学ぶところは数多くあります。
300社以上の企業を見てきたベンチャーキャピタリストである筆者が、成長するベンチャー企業経営者の共通点だと感じた"経営者マインド"をご紹介します。
「居心地のよさ=持続可能性」ではない
組織の中にも異見する人がいてこそ、議論が活性化し、ユニークな結論が出ることがよくあります。同質な人ばかりだと、凡庸な結論が繰り返されます。環境変化が少ない世界では違和感がないことが心理的安定性を生み出しますが、新しい価値の創造にはつながりません。
必ず起きる環境変化に対応していくには、多様性を受け入れてこそ、持続可能性は高まります。居心地のよさと持続可能性は、ある意味で二律背反なことかも知れません。
この二律背反を制してこそ、企業を成長させることができるのではないでしょうか。そのためにマインド・思考についてお話します。
成長を目指す上で必要な経営者マインドとは
■1)危機こそ「生き延びるチャンス」ととらえる
心にゆとりの持てる職場環境は理想ですが、経営基盤が脆弱なベンチャー企業に危機は必ず訪れます。絶望的と思える状況を掻い潜り、生き延びた企業はとても逞しくなります。大きな危機を経験することで、鈍感力を身につけ、高い目標に向かって邁進することができるようになります。
ベンチャー企業が成長の機会を得るには、果敢な挑戦が欠かせません。果敢な挑戦は失敗に終わることが多いのですが、その学習効果を生かして、挑戦なしには得られないノウハウや精神力が身につきます。
■2)居心地の悪さを受け入れる
成長を目指す企業は、あえて居心地の悪さを求めていく必要があります。達成できそうな目標ではなく、(知恵を絞らないと)到底達成できない目標を掲げることで、他社にはない収益モデルを思いつくことができるようになります。
また、価値観の共有が出来ているサポーターからの苦言は、建設的に捉え成長の糧としていく必要があるでしょう。叱咤激励、今ではあまり使われなくなりましたが、よき理解者からの苦言は英気を養うことに必ずつながります。