中国経済の「日本化」が、日本にもたらす大打撃
HANDLING THE CHINA RISK
江蘇省揚州市で碧桂園が進める住宅開発。中国では業界最大手の同社がデフォルト寸前に陥るなど不動産不況が深刻化する BLOOMBERG/GETTY IMAGES
<人口動態などの変化で「日本化」した中国経済が日本に与える悪影響と、それを回避する策とは>
中国経済の悪化が、足元で鮮明となってきた。中国の4~6月期の実質GDP成長率は前期比プラス0.8%、年率換算でプラス3%強と事前予想を大きく下回った。今年の政府目標である「5.0%前後」の成長の達成にも、黄色信号がともってきている。
こうした経済情勢の下、中国の7月の消費者物価は前年比で0.3%減と2年半ぶりのマイナスとなった。他方、住宅価格は2010年代半ばから上昇ペースを強めていたが、不動産への規制が強化された20年頃から足元まで低迷が続いている。
21年には不動産大手の恒大集団(エバーグランデ)の経営危機、社債のデフォルト(債務不履行)が表面化したが、経営不振や債権者との債務再編交渉はまだ続いている。さらに足元では、同じく不動産最大手の碧桂園(カントリーガーデン)も大幅赤字に陥り、その社債もデフォルトの瀬戸際にあるなど、不動産セクターの問題が再び深まっている。
このように中国経済は、物価下落と不動産価格下落が併存する「ダブル・デフレ」の様相を見せ始めている。そうしたなか、同様の特徴が見られたバブル崩壊後の日本経済のように、中国経済も長期低迷に陥るのではないかとの見方も浮上してきた。
バブル崩壊前後の日本経済と現在の中国経済との間には、共通点が多く見られる。以下ではそのうち3点を指摘したい。
リーマン・ショックの再来?
第1は、人口の変化などから、潜在成長率が大きく低下していることだ。日本の人口増加率は1970年代半ばの年間プラス1.4%をピークに低下傾向をたどり、2011年以降はマイナスが定着している。中国の人口も昨年、減少に転じた。
潜在成長率の低下を人々がまだ十分に認識できないなか、低金利環境下で過大な資産価格上昇が生じ、その後に大幅な下落に転じる過程では、経済、金融に深刻な問題が引き起こされる。また、ひとたび潜在成長率の低下が認識されていくと、需要は大きく抑制される一方、供給力を担う労働力、設備はすぐには減らせないため、需給が悪化して物価下落圧力が高まることになる。
第2は、当局が不動産市場の調整を正常化と捉え、一定程度容認する姿勢であることだ。80年代末の日本では、「住宅価格の高騰で一般庶民のマイホームの夢が遠のいた」として、当局は当初、不動産価格の下落を歓迎した。当時の大蔵省は、不動産業を含む特定業種への銀行貸し出しを強く規制した。いわゆる「総量規制」である。それと同時に日本銀行は金融引き締めを進め、「バブルつぶし」が行われた。当局は、資産デフレの真の怖さを十分に認識していなかったのだ。不動産価格の下落は最終的に、日本の銀行システムを大きく揺るがすことになった。