最新記事
中国経済

中国経済の「日本化」が、日本にもたらす大打撃

HANDLING THE CHINA RISK

2023年9月28日(木)13時40分
木内登英(野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

中国政府も、巨額の利益を上げた不動産業者らによる過剰な不動産開発が住宅価格の高騰を招き、個人の住宅購入を困難にさせたことを、格差縮小を目指す「共同富裕」の理念に照らして問題、としている。そのため、不動産業界への本格的な支援には慎重である。

第3は、アメリカとの間の貿易摩擦だ。日本では、アメリカとの貿易摩擦が産業の競争力低下と潜在成長率低下の遠因となったと考えられる。さらに、80年代にはアメリカから内需刺激を通じた輸入拡大を強く求められ、それに応じた過剰な金融緩和がバブルの形成につながった。中国では、近年のアメリカとの激しい貿易対立が、先端分野を中心に経済の打撃となっている。またアメリカとの対抗を意識した政府による民間企業への統制強化が、経済活動を萎縮させてしまった面もあるだろう。

中国では長引く不動産不況の影響から、資産運用商品である信託商品、理財商品などのデフォルトが増えてきており、銀行以外の金融仲介機能であるこうしたシャドーバンキング(影の銀行)の問題が、注目を集めるようになっている。中国国内の金融問題が世界にも波及し「中国版リーマン・ショック」となることを懸念する向きもある。

しかし実際には、シャドーバンキングを中心とする中国の金融問題は、90年代の日本の銀行不安のときと同様におおむね国内にとどまり、世界に大きく波及することはないだろう。この点からも、今後中国で起きることは、リーマン・ショックの再来ではなく「日本化」に近いと言える。

ただし、日本化する中国経済の低迷が、貿易を通じて世界経済に与える悪影響は深刻だ。IMF(国際通貨基金)によると、中国の成長率が1ポイント低下すると、世界の成長率は約0.3ポイント低下する計算だ。

中国の名目GDP(22年)はIMFによると世界の18.5%であり、直接的な影響だけ考えれば、中国経済の成長率が1ポイント低下したときの世界の成長率の押し下げ効果は0.18%程度となる。それを大きく上回る押し下げ効果が生じる計算であるのは、中国経済の下振れが貿易などを通じて他国の経済にもたらす波及効果が大きいことを示している。

主要国の中で最も打撃を受けやすいのは、中国向け輸出が全体の2割を占めるなど、中国経済への依存度が高い日本だろう。内閣府の試算に基づくと、現時点で中国の成長率が1ポイント下振れると、日本の成長率は0.65ポイント下振れる計算となる。実際には、この先数年を展望すれば、中国の成長率の下振れは1ポイントでは済まないだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英首相、辞任要求にも続投表明 任命問題で政権基盤揺

ビジネス

NEC委員長、雇用の伸び鈍化見込む 人口減と生産性

ワールド

中国BYD、米政府に関税払い戻し求め提訴 昨年4月

ワールド

EU、第三国の港も対象に 対ロ制裁20弾=提案文書
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業績が良くても人気が伸びないエンタメ株の事情とは
  • 4
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 5
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 9
    【銘柄】なぜ?「サイゼリヤ」の株価が上場来高値...…
  • 10
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中