中国経済の失速に歯止めをかける「2つのD」とは?...「日本を教訓」にできるか
CHINA MUST AVOID A DEBT-DEFLATION SPIRAL
最後に、積極的な金融緩和を提唱すると通貨安の懸念が浮上しがちだという点について。人民元は米中間の金利逆転状態のせいで、過去1年間に対ドルで約5%下落した。さらに下落すれば資本逃避を引き起こすのではないかと懸念されている。
しかし通貨安が経済をデフレの沼から救い出すための代償なら、それは支払う価値がある。中国製品の国外需要を高めることにもつながるかもしれない。為替レートの調整は市場の力に委ねるべきだ。そもそも大きな相場下落が1回生じた後に、さらなる下落はほとんど予測しにくい。
中国は、1990年代以降の日本のようにデフレマインドが定着するのを避ける必要がある。同じく緊急の課題として企業と家庭からの信頼を回復すべきであり、そのためには需要拡大が不可欠だ。
積極的な金融刺激策を直ちに実施し、債務とデフレの負のスパイラルに歯止めをかけるという当局の決意が強く求められる。
中国が潜在的な成長力を発揮する軌道に戻れば、金融政策の正常化が可能になる。人民元レートは自然と上昇するだろう。
魏尚進
SHANG-JIN WEI
コロンビア大学経営大学院教授(金融学・経済学)。アジア開発銀行(ADB)でチーフエコノミスト、世界銀行では汚職対策の政策・研究のアドバイザーなどを歴任した。