「銀行らしさ」からどう脱却するか...堅い銀行でイノベーションを実現させた「みんなの銀行」に学ぶ
──挑戦者やイノベーターが育ちやすい組織づくりに向けて、経営層やリーダー層はどんな役割を果たすとよいのでしょうか。
まず、新規事業を承認する立場である経営層は、組織としての大きなゴールさえ握れば、そこに至るまでのプロセスを問わずに現場に任せることも大切です。私自身、手を動かさずに口だけ出す評論家はいらないし、“Take the Lead(思い立ったら、やってみよう)” を推奨しています。この姿勢を体現できている人に裁量が与えられ、評価されるような人事評価の制度を整えていくことも重要です。みんなの銀行でも2023年4月から、INSIGHTに沿った行動をした人が評価されるような人事制度へと刷新を図っています。
次に、リーダー層にとって大事なのは、メンバーが小さな成功体験を積めるようにすることです。銀行のプロダクトを新たにつくることは簡単ではないですが、マーケティングなら新しいことをクイックに試せます。特にデジタルマーケティングならアウトプットの結果がすぐにわかる。みんなの銀行でも、職種関係なく全社員からアイデアを募って、面白いものには予算をつけようと考えています。口座獲得につながるマーケティングプランとか、サービスを盛り上げる施策とか。お客様がハッピーになる企画ならどんどんやってもらいたいと思っています。
「頭がスッキリ整理される!」を体現してくれたのは、あの伝説の名著
──永吉さんの人生や価値観に影響を与えた本は何でしたか。
外山滋比古さんの『思考の整理学』(筑摩書房)には大きく影響を受けました。刊行から37年間で270万部以上売れ、「知のバイブル」として読み継がれている一冊です。思考法やアウトプットに関するビジネス書は多数ありますが、そうしたメソッドの集大成のような本だと思っています。自分に合った方法を小さく試すことができます。私の場合は、「カード(大きい付箋で代用)」にアイデアを書いて、「つなげる」「寝かす」「忘れる」などを実践しています。机の上に付箋がいっぱい貼ってあるのは、この本の影響です(笑)。
みんなの銀行のモットーは「クリエイティブであれ!」。変化の激しい時代では、これまでの延長線上の日常をくり返すだけでは生き残れないという危機感があります。テクノロジーを活用しながら、人間ならではのアイデアをつくり出し、それを掛け合わせていく必要があると考えています。そのためには、良質なインプットとアウトプットをくり返すことが大事ですが、『思考の整理学』はインプットとアウトプットを行き来する際の「頭の中の整理方法」が余すことなく書かれている一冊です。