最新記事
日本経済

止まらない円売り圧力で1ドル144円台に 円安悪者論が落ち着き介入にまだ距離の見方

2023年6月28日(水)17時32分
ロイター
千円札と50ドル札

ドル/円だけでなくユーロなどクロス円を含め広範囲に円売りが継続している。写真はイメージ。2017年6月撮影(2023年 ロイター/Thomas White)

ドル/円だけでなくユーロなどクロス円を含め広範囲に円売りが継続している。「動かない日銀」と、インフレ抑制に向けた主要中銀よる積極的な金融引き締め姿勢との違いが鮮明となっていることが主因だ。市場では昨年とは異なる円安に政府・日銀による為替介入にはまだ距離があるとの見方が多いが、一段の円安進行に対する警戒感も強まっている。

止まらない円売り圧力

ドルは心理的な節目の142.50円を抜けた後、27日の海外時間では一時144円前半と、昨年11月以来の高水準まで上昇した。金融政策の方向性の違いが鮮明となり、クロス円を中心とした円売りが主導し、ドル/円を押し上げている。

インフレに苦しむ欧州中央銀行(ECB)や英中銀が積極的な金融引き締め姿勢を示す一方で、円債市場の機能改善や日銀当局者の金融緩和維持の姿勢を背景に、イールドカーブ・コントロール(YCC)の修正を含めた早期の日銀の政策修正観測が後退していることが要因だ。

年初は円高予想が多かったこともあり、「昨年ほどではないものの、140円を超えてから、為替予約で保有していたオプションが消滅するなど、買い遅れている国内輸入企業が多く、(東京市場の)仲値公示にかけてはドル需要が強い」(国内銀行)という。

ドルが140円台に乗せて以降、鈴木俊一財務相や神田真人財務官から円安けん制発言が相次いでいるが、「口先介入」の効果は一時的で、すぐに円売りが再開する状況が続いている。昨年に円買い介入を実施する直前の「断固たる対応をとる用意ができている」などの強い発言は出ておらず、市場では「まだ距離がある」(別の国内銀行)との見方が多い。

悪い円安論が強まらず

22年9月に政府・日銀が24年ぶりに円買い介入を実施したドルの水準は145円。年初の115円付近から30円程度、上昇したタイミングで介入に踏み切った。

足元のドル/円は144円付近と、年初の130円付近から約14円上昇しているものの、昨年と比較すれば緩やかなペースとなっている。当局は為替の水準ではなくスピードが重要との見方を示していることから「口先介入はできたとしても、実弾介入に動くのは難しいのではないか」(国内銀行)との読みが市場では多い。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促

ビジネス

米アポロ、後継者巡り火花 トランプ人事でCEOも離

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中