止まらない円売り圧力で1ドル144円台に 円安悪者論が落ち着き介入にまだ距離の見方
ドル/円だけでなくユーロなどクロス円を含め広範囲に円売りが継続している。写真はイメージ。2017年6月撮影(2023年 ロイター/Thomas White)
ドル/円だけでなくユーロなどクロス円を含め広範囲に円売りが継続している。「動かない日銀」と、インフレ抑制に向けた主要中銀よる積極的な金融引き締め姿勢との違いが鮮明となっていることが主因だ。市場では昨年とは異なる円安に政府・日銀による為替介入にはまだ距離があるとの見方が多いが、一段の円安進行に対する警戒感も強まっている。
止まらない円売り圧力
ドルは心理的な節目の142.50円を抜けた後、27日の海外時間では一時144円前半と、昨年11月以来の高水準まで上昇した。金融政策の方向性の違いが鮮明となり、クロス円を中心とした円売りが主導し、ドル/円を押し上げている。
インフレに苦しむ欧州中央銀行(ECB)や英中銀が積極的な金融引き締め姿勢を示す一方で、円債市場の機能改善や日銀当局者の金融緩和維持の姿勢を背景に、イールドカーブ・コントロール(YCC)の修正を含めた早期の日銀の政策修正観測が後退していることが要因だ。
年初は円高予想が多かったこともあり、「昨年ほどではないものの、140円を超えてから、為替予約で保有していたオプションが消滅するなど、買い遅れている国内輸入企業が多く、(東京市場の)仲値公示にかけてはドル需要が強い」(国内銀行)という。
ドルが140円台に乗せて以降、鈴木俊一財務相や神田真人財務官から円安けん制発言が相次いでいるが、「口先介入」の効果は一時的で、すぐに円売りが再開する状況が続いている。昨年に円買い介入を実施する直前の「断固たる対応をとる用意ができている」などの強い発言は出ておらず、市場では「まだ距離がある」(別の国内銀行)との見方が多い。
悪い円安論が強まらず
22年9月に政府・日銀が24年ぶりに円買い介入を実施したドルの水準は145円。年初の115円付近から30円程度、上昇したタイミングで介入に踏み切った。
足元のドル/円は144円付近と、年初の130円付近から約14円上昇しているものの、昨年と比較すれば緩やかなペースとなっている。当局は為替の水準ではなくスピードが重要との見方を示していることから「口先介入はできたとしても、実弾介入に動くのは難しいのではないか」(国内銀行)との読みが市場では多い。