スーダン戦闘長引けばコーラなど炭酸飲料が飲めなくなる!? 重要原料アラビアガムの供給止まる恐れ
ガム・アラビックUSAを経営するモハマド・アルノア氏は、現時点では、スーダンの農村地域からアラビアガムを追加調達することは、国内の混乱や道路封鎖のため「不可能」だと述べた。同社はアラビアガムを健康サプリメント製品として消費者向けに販売している。
アラビアガムがなければペプシもコカ・コーラもお手上げ
ケリー・グループや、スウェーデンのガム・スーダンなど他のサプライヤーによれば、現地の窓口との連絡が困難になっており、アラビアガムの出荷拠点であるスーダン港では民間人の避難が優先されているという。
ムンバイを拠点とする輸入企業、ビジェイ・ブラザーズでマネジングディレクターを務めるジネシュ・ドシ氏は、「戦闘のせいで、弊社のサプライヤーは必需品の確保に苦労している」と語る。「買う側も売る側も、いつ事態が正常化するか全く分からない」
アラビアガム輸出企業であるAGPイノベーションズを保有するアルワリード・アリ氏は、顧客がアラビアガムの調達先としてスーダンに代わる国を探していると話す。
AGPイノベーションズでは、フランスのルーアンを本拠とするネクシラSASや、イリノイ州ウェストチェスターのイングレディオンにアラビアガムを販売しているという。両社は、ペットフードや炭酸飲料、栄養補助バー食品などを製造するメーカー向けに原材料を供給する主要サプライヤーだ。
イングレディオンの広報担当者はメールで、「顧客への供給をしっかりと続けていくため、ビジネス全体で先手先手の取り組みを実施している」と回答した。
ペプシコは、サプライチェーンやコモディティーの問題についてはコメントを控えた。コカコーラにもコメントを求めたが、回答は得られなかった。
「ペプシやコカコーラといった企業は、製品のレシピからアラビアガムがなくなったらお手上げになる」と語るのは、アラビアガムの供給で世界のトップテンに入るアグリガムでマーケティング・開発担当ディレクターを務めるダニ・ハダド氏。
業界関係者によれば、食品・飲料メーカーは、製造プロセスの中で、吹き付け乾燥で粉状になったアラビアガムを使用しているという。化粧品や印刷関連メーカーであれば代替材料を使うこともできるかもしれないが、成分の分離を防ぐためにアラビアガムを使う炭酸飲料の場合は、そうした逃げ道がない。
消費財産業にとってアラビアガムがどれほど重要であるかは、米国による1990年代以来の対スーダン制裁においても、この商品が対象から外されていることからも分かる。必要不可欠なコモディティーであると同時に、闇市場の出現を懸念したためでもある。
スーダンの遊牧民族は、アカシアの木からドロリとした琥珀(こはく)色の樹液を採取する。精製とパッケージングは国内全域で行われている。ガム・スーダンによれば、数千世帯の生計を支えており、高級品では1トン約3000ドルもする。
品質の劣る低価格のアラビアガムならスーダン以外でも産出するが、前出のアルノア氏は、原料として好まれる製品は、スーダン、南スーダン、チャドのアカシアからしか採れないと語る。
ハルツームのサバンナ・ライフ・カンパニーでゼネラルマネジャーを務めるファワズ・アッバロ氏は、アラビアガム60─70トンの受注を抱えており、輸出を予定しているものの、戦闘のせいで実現するかどうか危ぶんでいる、と話す。
「食料や飲み物の入手さえ安定していない。ビジネスもこの先は不透明になるだろう」とアッバロ氏。「どんな商売も当面は滞るのではないか」
(Richa Naidu記者、Jessica DiNapoli記者、Rajendra Jadhav記者、翻訳:エァクレーレン)