JPモルガン・チェースのダイモンCEO、破綻した銀行救済に復帰 ファースト・リパブリック銀行と連邦預金保険公社も救う
米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が、経営破綻した銀行の救済を巡る波乱の舞台の主役として戻ってきた。2018年11月、パリで撮影(2023年 ロイター/Benoit Tessier)
米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が、経営破綻した銀行の救済を巡る波乱の舞台の主役として戻ってきた。
15年前にベアー・スターンズの買収で苦い思いを味わったダイモン氏はその後、もう救済にはかかわらないと発言していた。ところが1日朝、中堅銀行ファースト・リパブリック銀行を連邦預金保険公社(FDIC)の管理下から引き取ると表明したのだ。
これで当面、納税者にかかる重圧は和らぐし、取引条件面からすればJPモルガン株主にもプラスに働くのは間違いない。だが破綻銀行について、「大き過ぎてつぶせない」という危険な発想をさらに定着させない形でどうやって処理すべきか、米当局が有効な手だてを持ち合わせていないことも改めて浮き彫りとなった。
好条件での取引
JPモルガンにとって今回は非常に有利な取引と言える。ファースト銀の2290億ドル弱の資産と約1730億ドルのローンを実勢評価額よりおよそ13%低い価格で取得できるからだ。税金とFDICへの1060億ドルを支払った後、統合費用を計上する前の段階でJPモルガンは26億ドルの利益を確保できる。資本バッファーに対する悪影響も想定していない。
FDICはダイモン氏の支援を得るために、幾つかの好条件も提示した。ファースト銀のローンポートフォリオの大部分について損失の最大8割の負担を申し出たほか、500億ドルの固定金利タームローンも提供する。
通常の環境であれば、JPモルガンがファースト銀を買収するのは認められなかっただろう。まして幾つかの公的な支援措置付きなどもっとあり得ない。全米の預金残高の少なくとも10%を保有する銀行は買収を通じてそれ以上預金を拡大するのは許されないからだ。JPモルガンも昨年末時点で、この上限を超えていた。
それが今回、買収のお墨付きをもらったことでJPモルガンとダイモン氏は一層強大な存在になる。シティグループのジェーン・フレーザーCEOやバンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEO、PNCファイナンシャル・サービシズのビル・デムチャックCEOといった面々は、業界最大手行がさらに巨大化するのを座視するしかない。