高級車市場をリードしたドイツ車、中国で劣勢に 何が起きた?
コンサルタント会社カーニーのパートナー、トーマス・ルク氏は「中国市場はドイツメーカーにとって、もう以前のように安定してはいない」と言う。「より速くなるだけでは追いつけない。企業文化を変えるべきだ」
思考の変革
アナリストは、ドイツメーカーは新型EVを内燃機関車の電動版として販売する傾向があり、まだEV化を第1に考えるという意識改革ができていないようだと指摘する。
ツァン氏は「EVを内燃機関車の延長線上ではなく、新世代の製品として捉えることが重要だ」と話す。「上海自動車ショーでこの誤解が解けることを期待している」と語る。
中国の自動車メーカー、広州汽車集団(GAC)の馮興亜社長は「海外ブランドが自らの考え方に固執すれば、徐々に消えゆくだろう」と述べた。
ドイツメーカーは中国での販売てこ入れの一環として、中国人のEVブロガーやマーケティングの専門家などに声を掛けていると、実際に接触を受けたブロガーの1人が明らかにした。
中国ブランドは欧州進出のために新たな販売戦略を採っており、アナリストは欧州で既に地歩を築いているブランドがデジタル時代に対応するために、こうした動きから学ぶべきだとしている。
上海蔚来汽車(NIO)、吉利汽車とボルボ傘下のLynkはコミュニティースペースやカフェ、バーを設置している。NIOによると、こうした取り組みは口コミの拡散を通じて販売につながる。
また、多くのメーカーが直接販売も導入しつつある。BMWやメルセデス・ベンツなどドイツメーカーもこの数カ月、直接販売を行う意向を示した。
しかし、消息筋によると、中国ブランドは欧州で積極的な戦略に打って出る前に、まず国内市場の足固めに注力している。欧州ではアジアのバッテリーメーカーが既に確固たる地位を築いている。
ある消息筋によると、中国のEVブランドは価格を引き下げることができるにもかかわらず、中国メーカーによる市場支配を懸念する欧州の政策当局者を動揺させないため、今のところ価格を高く設定しているという。
BYDは今週、航続距離300キロを超えるEV「シーガル」を発売。最低価格はわずか1万1000ドルと、欧州の多くのエントリークラスの内燃機関車よりも安い。BYDは今年後半に新たな新型EV「シール」と「ドルフィン」を欧州市場に投入する予定だ。
ルク氏によると、中国メーカーは欧州で慎重に事を進めている。
一方、中国市場における戦いは熾烈を極めている。
オートモーティブ・インサイトのツァン氏は「以前は『絶望的』という言葉を使うことに慎重だった。しかし今は、少なくとも中国では、外国ブランドの時代は着実に終焉を迎えつつあると確信している」と話した。
