春闘15日が最大のヤマ場 賃上げと株価、業績裏付けある先行企業が優位に
3月9日に春闘決起集会を行った日本最大の産業別労組UAゼンセンの松浦昭彦会長ら Androniki Christodoulou - REUTERS
日本企業でもようやく賃上げの動きが広がってきた。しかし、理由の多くは需要増ではなく、物価高や人手不足などコスト増であり、株価の反応もまちまちだ。業績の裏付けがある先行企業はポジティブな評価が多いものの、長期的な株価上昇要因となるには持続的な賃上げを実施できるかが焦点となる。
先行企業は業績期待も
DMG森精機は昨年8月、2023年4月入社の新入社員の初任給を引き上げると発表した。博士課程の修了者では、月額の基本給を11万1510円引き上げ47万5000円と30%増になる。
同社は22年12月連結営業利益が前年比78%増と業績が好調でもあり、株価は賃上げ発表日から31%上昇。同期間の日経平均株価の上昇率7.5%を大きく上回っている。
松井証券の投資メディア部長・窪田朋一郎氏は、先陣を切って賃上げできる会社は企業業績がしっかりしているとの思惑につながりやすいと話す。1月に賃上げを発表したオリエンタルランドも発表1カ月後の株価の伸びが4%と、同期間ほぼ横ばいの日経平均よりもパフォーマンスが高い。
ただ、DMGやオリエンタルランドのケースは例外的で、全体としては賃上げと株価との明確な関係性は見い出せない。多くの企業が賃上げの理由を物価高や人手不足としており、業績の裏付けがあるかどうかは個別企業によるためだ。
持続性が焦点
焦点は、賃上げが一時的なものにとどまらず、持続性を伴うかどうかだ。少子高齢化を背景に日本の労働人口は減少が見込まれる一方、生産性の向上には不透明感が濃い。
JPモルガン証券のチーフ株式ストラテジスト・西原里江氏は「長年、消費者が抱えていたデフレマインドは解消されつつあり、企業が価格転嫁をしやすい環境が整ってきているため賃上げは続く」とみる。
日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト・神山直樹氏も、景気後退とならなければモノや人材の不足が続くため、「メインシナリオではないが、目先2―3年は賃上げが続く確率が高まっている」との見方を示す。
賃金上昇が続けば「賃上げできる企業とそうでない企業の二極化や選別が進み、日本経済の新陳代謝が上がる」(GCIアセットマネジメントのポートフォリオマネージャー・池田隆政氏)との指摘もある。
しかし、労働人口の減少はイノベーションを担う者の減少も意味する。賃上げは世界的に起きており、国際競争の中で人材を確保するのは容易ではない。実質的な賃上げを持続するには生産性を向上させるしかないが、現時点ではまだ見通すのは難しい。
(浜田寛子 編集:伊賀大記)