最良のフォーメーションとは? サッカーに学ぶ「人事戦略の極意」8カ条
WHAT CEOS CAN LEARN FROM THE WORLD CUP
ポジションやフォーメーションからサッカーを見れば経営のヒントに(2022年12月、カタールW杯優勝の喜びに沸くアルゼンチン代表) PAUL CHILDSーREUTERS
<スター選手は重要だが、彼らを輝かせるにはチーム全員に適材適所がある。ドイツ1部リーグのデータを分析して判明した、チーム編成に活かすコツ>
人材こそがわが社にとって最大の競争力だ──。
企業では中堅管理職から人事担当、CEO(最高経営責任者)までもが、こんな決めぜりふを口にしたがる。
もっともらしい言葉だが、問題が1つ。真実ではないのだ。
企業の「スター選手」は確かに競争力の源だが、彼らを輝かせるには最も重要な役割を割り振らなければならない。仕事をそつなくこなすだけの社員は競争の切り札にはならないし、一流の人材を重要度の低い役割に就けるのは才能の無駄遣いになってしまう。
適材適所を実現したいなら、経営者は全体の戦略を立ててから人事を考えたほうがいい。今後5年間でどんな戦略を取るつもりなのか。それを遂行するのに不可欠なポジションとは何なのか。人事を決める際は、業績に関するデータを基に、できるだけ客観的に判断するべきだ。
そこで格好のヒントになるのが、ワールドカップ(W杯)の熱狂も記憶に新しいサッカー。11人で構成されるサッカーチームは、優秀な経営チームとも規模が近い。どのポジションも大事だが、成功をつかむ上でより重要なポジションはあるのだろうか。1つずつ見ていこう。
■勝利をつかみ取るのはゴールキーパー
ピッチで最も重要なのはゴールキーパーだとする声は多い。
例えば2018年に英リバプールがローマに6500万ポンドの移籍金を払って獲得し、当時史上最も高価なキーパーとなったアリソン・ベッカー。彼は19年の欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグでナポリを下しリバプールを決勝トーナメントに進出させるなど、史上最高の移籍金に見合う活躍を見せた。
この年リバプールはチャンピオンズリーグで優勝。ユルゲン・クロップ監督は「こんなにできる選手と知っていたら、倍の金額を払ってもよかった」とベッカーを絶賛した。
キーパーはどのポジションよりもメンタルの強さが試される。出番のない時間もあるが「チームの運命を背負う瞬間を試合中に何度か経験する」と女子W杯元アメリカ代表のキーパー、ブリアナ・スカリーは言う。
シュートを決めさせないのが主な仕事だが、チームによってはスイーパー(ディフェンダー)も務める。14年のW杯ではマヌエル・ノイアーがスイーパー=キーパーとして、ドイツの優勝に貢献した。時には攻撃の起点となり、中には「キーパーこそが攻撃の一番手だ」と言い切る元イタリア代表ティアゴ・モッタのような選手もいる。