最新記事

中国経済

「投資家はがっかり」の中国新指導部が、成果を出せる手っ取り早い方法

IT ALL DEPENDS ON XI

2022年11月26日(土)11時40分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)
習近平

習近平(中央)の3期目を担う新指導部は投資家に好印象を与える顔触れではなかった INHUA/AFLO

<習近平政権の新指導部に並ぶのは、李強、丁薛祥と、経済手腕が未知数すぎる男たち。中国経済最大の難題である不動産危機に解決策を見いだせるのか>

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が10月の中国共産党第20回全国代表大会(党大会)で披露した新しい党指導部の顔触れは、国内外の金融市場に好印象を与えなかった。

翌週の香港の株式市場は8.3%下落。中国株式市場の主要指標である上海総合指数も4%下落し、米株式市場に上場する中国企業の株価は15%も急落した。

投資家が懸念するのも無理はない。

習の3期目続投は予想どおりだったが、新指導部にはもっと穏健で、政治より実務を優先できる経験豊富な面々が期待されていた。習はそれに反して、党政治局と常務委員会を自らに忠実なメンバーで固めた。

常務委員会ナンバー2で、来年3月に首相に選出される李強(リー・チアン)は、習の秘書長を務めた後、江蘇省と上海市の党トップを歴任。

上海に米電気自動車大手テスラの米国外最大の工場を誘致するなど、民間企業に優しいという評判を高めた。だが1988年以降の歴代首相とは違い、これまで中央政府での職務経験がない。

副首相となる丁薛祥(ティン・シュエシアン)は、10年近くにわたり習の最側近として仕えてきたが、指導力を発揮した経験はさらに乏しい。

新指導部に中国経済の立て直しを期待する投資家からすれば、この2人では心もとない。

ただ期待が低いことは、習にとって有利でもあるだろう。どんなに小さな成功でも、政府の信頼回復につながるからだ。

最も成果を出しやすいのは、「ゼロコロナ政策」絡みかもしれない。この政策は中国経済に打撃をもたらし、都市部の若者の失業率が20%近くにまで悪化する要因となった。

習の3期目を迎えるなかで、政策打ち切りの機運は高まっている。中止すればすぐにも経済成長と雇用が促進され、李と丁の評価は上がるだろう。

【関連記事】中国は「GDPアメリカ超え」を諦め、ゼロコロナを突き進む

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中