アングル:「トリプルパンチ」の日米株、下値メド読めず 年度替わり要因も

3月31日、日米の株式市場が「トリプルパンチ」に見舞われ、下値メドが読みにくくなっている。写真は東京証券取引所で1月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Noriyuki Hirata
[東京 31日 ロイター] - 日米の株式市場が「トリプルパンチ」に見舞われ、下値メドが読みにくくなっている。トランプ米大統領による高関税政策の不透明感に加えて、景気停滞とインフレが同居するスタグフレーション懸念、AI(人工知能)関連株の失速と、株式を売る材料が目白押しだ。さらに日本には年度替わりに伴う特有の需給要因も指摘されている。
1500円を超える下げとなった31日の東京市場では「日経平均が下げ止まるかはわからない。きょうの米国株の値動きにも気が抜けない」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との声が聞かれた。
注目されたのは、米株先物の値動きだ。前週末の米国市場では、米経済指標の発表を受けてインフレと景気停滞が懸念され、主要3指数がそれぞれ大幅安となった。とりわけ、ハイテク株比率の高いナスダック総合は前週末に2.7%安、さらに31日時間外の同先物が1%超安となり、日本株の下落を増幅した可能性がある。
米株先物の下落の背景の一つと捉えられているのが、クラウドサービス企業で米エヌビディアが出資する米コアウィーブによる先週の新規株式公開(IPO)の不調だ。同社はIPO規模を縮小し、売り出し価格を従来の想定レンジを下回る水準に設定したが、初値はそれを下回った。
関係者によると、事前の機関投資家向け説明会(ロードショー)は予想を下回る反応だった。投資家は不安定な市場に加え、コアウィーブの長期的な成長見通しや財務リスク、資本集約性に懸念を抱いていた。
市場では、低コストを謳う中国AIのディープシークの台頭を受け、米大手ハイテク企業が進める大規模投資の回収可能性に懐疑的な見方が浮上し、エヌビディアを中心とするAI関連需要への期待が後退してきていたが、コアウィーブのIPO不調は「その(期待後退の)根強さを改めて印象付けた」(松井の窪田氏)といい、米株の先物安にも織り込みが入ったとみられている。
ナスダック総合は、3月前半につけた前回安値に接近している。「これを下抜けるとチャートの節目が見当たらず、調整局面から下落相場への移行の瀬戸際にあるといえる」(窪田氏)という。
<年度替わり、かく乱に拍車か>
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「米高関税、スタグフレーション懸念を口実として、本質的に米国株の投資家はバリュエーション調整をしたいのだろう」と指摘する。日本株はつれ安した形となっている。
その米国株には、調整リスクがなお付きまとっている。S&P500は、株式と債券の利回りの差を映すイールド・スプレッドがマイナス圏にあった年末年始ごろに比べると、足元ではプラス0.6%程度と割高なバリュエーションはやや緩和してきている。ただ、前年8月の急落時にはイールド・スプレッドが1%程度に上昇した経緯があり、この水準までのバリュエーション調整を見込むとすれば、S&P500はさらに7─8%程度の下げ余地があるとみることも可能だ。
ニッセイ基礎研の井出氏は、足元の不透明感を踏まえると、S&Pの調整はこれにとどまらないリスクもあるとの見方を示す。「(前年8月の)当時には、米連邦準備理事会(FRB)による利下げの株安抑止効果への期待があったが、今は利下げの思惑は後退している」ためだ。先行き、トランプ政策の影響で米国の実体経済の悪化が確認される場合「2けた%の調整は避けられないだろう」(井出氏)という。
複数のリスク要因が浮上する中、今週は日本株にとって年度替わりの週に当たることも、相場のかく乱要因になっていそうだ。
31日は、前週末の米株安につれ安した日本株の方が、下落率が大きかった。岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部部長は「この数年、月末月初、期末期初は需給面の波乱がみられる。こうした要因も、株価が過剰に動いた背景にあるのではないか」と指摘する。
一方、期初には、機関投資家による益出しの売りも見込まれるという。米国の相互関税の発表や自動車関税の発動に加え、週末には米雇用統計の発表も控えている。「今週いっぱいは、腰の入った買いは期待しにくい」と、岩井コスモの有沢氏は話している。
(平田紀之 編集:橋本浩)