今すぐ辞めてほしい「モンスター社員」を解雇する方法。所要期間は? 注意点は?
■ステップ4:解雇の通知
これらのステップを踏んでもなお、問題行動に改善が見込まれない場合には、解雇を通知します。法的には解雇の通知を書面で行う必要はないですが、証拠の観点からは書面で通知することが通常です。上記のとおり、モンスター社員に対しては懲戒解雇を行うことが多いですが、予備的に普通解雇も加えておくことも可能であり、そのほうが安全といえます。
他方で、上記のステップを踏んだ結果、問題行動が改善した場合には、解雇をすべきではありません。時折、"解雇ありき"でステップを進め、問題行動が改善したり、反省の態度を見せている場合でも、「解雇をしたい」と相談を受けることがありますが、問題行動が改善した以上は、モンスター社員を解雇することは難しいと考えてください。しかし、これまで行ってきた問題行動が消えるわけではありませんので、それに対して懲戒解雇以外の懲戒処分を行うことは可能です。
解雇までの所要期間・支払金額
懲戒解雇までの所要期間は、問題行動によってケースバイケースですが、あまり拙速に行うべきではありません。基本的には3か月~1年は見た方が良いでしょう(途中改善の傾向があれば、もっと期間を要することもあります)。
懲戒解雇の判断をする場合には、金銭は発生しません。ただし、その前に、退職勧奨によって自主退職を促すこともあります。その場合にも、問題行動によってケースバイケースですが、賃金の1〜3か月分程度を支払うことが多いでしょう。
所要期間や支払金額については、弁護士などの専門家の意見を聞きながら進めていくとよいでしょう。
【参考】
労働基準法 / e-Gov
労働契約の終了に関するルール / 厚生労働省
2022.09.09
[執筆者]
堀田陽平
石川県出身弁護士
2020年9月まで、経産省産業人材政策室で、兼業・副業、テレワーク等の柔軟な働き方の推進、フリーランス活躍、HRテクノロジーの普及、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)等の働き方に関する政策立案に従事。
【情報発信等】
日経COMEMOキーオピニオンリーダとして働き方に関する知見を発信。著書「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)