1ドル144円台突入 円急落が呼び込む円売り圧力スパイラル
外国為替市場で円安が一段と勢いを増し、対ドルでは9月7日、144円台と24年ぶり安値を更新した。今年の円の下げ幅はすでに28円と、43年ぶりの大きさに達した。都内で同日撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
外国為替市場で円安が一段と勢いを増し、対ドルでは7日、144円台と24年ぶり安値を更新した。今年の円の下げ幅はすでに28円と、43年ぶりの大きさに達した。記録づくめの円安をけん引しているのは日米金利差や日本の貿易赤字だが、ここにきて円の急落が一段の円売りを呼び込む動きも表れ始めている。
オーバーヘッジとノックアウト
ドルは対ユーロでも20年ぶり、対英ポンドでも2年半ぶり高値を更新するなど全面高で、円だけが大きく下落しているわけではない。むしろ、この3カ月間の主要通貨の動きを見ると、ペロシ米下院議長が台湾を訪問して米中関係に緊張が走った8月初旬など、円は一時ドルを上回る強さを見せていたこともある。
しかし、ドル一強に変化はないまま、8月後半から次第に円の下げが目立つようになる。その過程で話題となったのは、国内機関投資家が「オーバーヘッジ」と呼ばれる問題の解消に向けて動いた円売りだ。
日本の機関投資家は、金利も流動性も高い米国債を中心に資産運用を行っているが、保有債券の多くは為替リスクを排除した「ヘッジ外債」だ。資産購入のため実施したドル買いと同等のドル売りを行うことで、実質的に為替変動により発生する損益を相殺することができる。
ここで問題となるのは、保有資産の評価額が大きく下落した場合だ。保有資産に対してドル売りポジションが大きくなりすぎると、過剰な為替リスクを負う形になるため、調整のドル買い/円売りを実施する必要が生じる。年限を問わず米金利が歴史的水準へ急上昇、つまり債券価格が広範に急落したことで、追加の円売りが発生しやすくなっている。
エネルギー関連など製品輸入が多く、支払いのため恒常的に円売り/ドル買いを入れる輸入企業も、急速な円安進行で追加的な円売りに迫られている。金融機関と為替予約を結ぶ際に設定したドルの上限を突破すると「ノックアウト条項」が発動され、保有するオプションが消滅、再び円売りの為替予約を入れなければならないためだ。