水のボトル6本が2000円 カナダ極北部の人びとを苦しめる物価高
この地域は長年にわたり食料不足に苦しんできた。統計局が2020年に行った調査によれば、2017-18年に同準州の世帯のうち57%が食料不安に悩まされており、カナダの州・準州の中で最悪の水準だった。「食料不安」とは、世帯に必要な種類もしくは量の食料を買う経済的な余裕がない状態と定義されている。
カナダ北部地域は連邦政府の食料補助金「ニュートリション・ノース」の支給対象となっている。これにより、北部地域における一部のコミュニティーにおいて特定の食品価格は引き下げられているが、カジュクトゥルビクのブレイス氏によれば、それでも不平等の是正はできていないという。
この地域は水産資源に富んでいるが、その恩恵を直接受けることもできない。沖合ではターボット(大型のヒラメ)やエビが獲れるが、漁獲量の95%以上は輸出向けだ。ヌナブト漁業協同組合でエグゼクティブ・ディレクターを務めるブライアン・バーク氏は、同準州には水揚げのできる深水港もなければ、沿岸に近い経済的な漁場を特定するための研究も行われていないと言う。
食料価格を押し上げる空輸コスト
政府は4000万カナダドルを投じて同準州初の深水港を建設すると約束しているが、完成は数年先になる。
「スープキッチン」を率いるブレイス氏は、同準州の住民からは、小売店が不当に高い価格をつけているのではないかと疑う声もあるという。
昨年、北部最大の食料品チェーンの1つであるノースウェスト・カンパニーは、2019年に比べて純利益が82.5%増加したと報告した。もっともこれは、パンデミック中に消費者の購入量が増えたことを反映したもので、ノースウェストで国内店舗運営担当バイスプレジデントを務めるマイク・ボーリュー氏は、同社の利益率は南部の食料品店チェーンと変わらないという。
ボーリュー氏によれば、ヌナブト準州の食料価格が高くなる最大の要因は空輸コストであり、過剰包装の削減や賞味期限を延長する規制によりコストが下がる可能性がある。
たとえば箱入りシリアル食品の場合、箱の中身の3分の1はただの空気である場合が多い。食品によっては賞味期間が過度に短く設定されているため、実際には長持ちするという。
イカルイトのケニー・ベル市長は、価格上昇は食品会社の責任ではないと語る。
「ここでの事業には本当にコストがかかる」とベル市長は言う。「しかも事業コストは確実に増大している」
(Rod Nickel記者、翻訳:エァクレーレン)
