最新記事

自動車

日本でEVが普及しない根本原因とは ── 30分かけても高速道1時間分しか充電できない

2022年7月23日(土)12時30分
山崎 明(マーケティング/ブランディングコンサルタント) *PRESIDENT Onlineからの転載

テスラに限っていえば、120kW級(一部250kW)という独自の強力なスーパーチャージャー網が使えるが、全国に49カ所(2022年7月1日現在)しかないうえに、利用するにはいったん高速道路を降りなければならないし、高速のインターチェンジ近くにあるのはごく一部だ。

1回あたり100km分程度の充電しかできない高速道路の充電器

ではなぜ、40~50kWの充電器では不十分なのか。

現在、急速充電器の利用は1回30分に限定されている。充電待ちの車が発生する可能性があるので、1台が長時間占有しないようにするためだ。

50kWの充電器は1時間で50kWhの充電が理論的には可能で、30分では最大25kWhとなる。私の経験では、充電器・車載バッテリーの保護回路が働いたりして20kWhくらい入れば御の字、というのが現実である。

BEVはガソリン車とは反対に、市街地では電費がいいが高速道路では電費が悪くなる傾向にある。電費はガソリン車同様車種によって異なるが、高速道路では1kWhあたり5km程度が標準的なようだ。

つまり、50kWの充電器で30分充電しても100km分くらいしか充電できないのである。40kWの充電器なら80km程度だ。

1リットルあたり20km走るガソリン車にたとえるなら、30分かけても4~5リットルのガソリンしか給油できない、という状況だ。仮に90kWの充電器を使っても10リットル程度しか入らないのと同じだ。

充電待ちに1時間......

これは車のバッテリー容量がどんなに大きくても一緒で、最初の満タン分の電気を使い果たしたら、どのBEVでもこのように小刻みな充電でつないでいくしかない。宿泊を伴う旅行でも、宿泊先にごく一般的な普通充電器しかなければ、1時間あたり約3kWhしか充電できない。8時間充電しても24kWh、120km分しか充電できないのだ。

さらに問題はあって、多くの充電スポットは充電器がひとつしかない。先客がいた場合、30分待ったうえ、充電に30分かかるので、1時間そのスポットで過ごさなければならないのだ。

私もBEVでドライブ中、この「無意味な1時間待ち」をさせられた苦い経験がある。BEV先進国のノルウェーでも、バカンス時期にはかなりの「充電渋滞」が発生しているらしい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中