最新記事

エネルギー

日本政府、サハリン2権益維持へ商社を支援へ ロシアの条件提示待ち

2022年7月16日(土)14時12分
サハリン2の貯蔵タンク

日本政府は極東ロシアの石油・天然開発事業「サハリン2」の権益維持に向け、実際に出資する商社を支援する方針を固めた。現在の事業を自国企業に移管する方針を示したロシアからの条件提示を待ち、三井物産、三菱商事と本格的な調整に入る。写真はサハリン2。2006年10月、サハリン州プリゴロドノエで撮影(2022年 ロイター/Sergei Karpukhin)

日本政府は極東ロシアの石油・天然開発事業「サハリン2」の権益維持に向け、実際に出資する商社を支援する方針を固めた。現在の事業を自国企業に移管する方針を示したロシアからの条件提示を待ち、三井物産、三菱商事と本格的な調整に入る。事情を知る関係者3人が明らかにした。

ロシアのプーチン大統領は先月末、サハリン2の事業を新会社に移す大統領令に署名。日本の商社などが権益を維持するには改めてロシアに申請して認められる必要があり、ウクライナ情勢を巡って主要7カ国(G7)と足並みを揃える日本政府の対応が注目されていた。

事情を知る政府関係者らによると、このほど権益維持を目指す方針を固めた。経産省関係者はロイターの取材に「商社が権益維持で動けるようにサポートする方向性を決めた」と説明。「商社にはこれから伝える」とした。

岸田文雄首相は14日の記者会見で、「日本の権益を守り、LNG(液化天然ガス)の安定供給確保ため官民一体で対応したい」と述べていた。

ロイターは経産省にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。三菱商事は「政府・パートナーと連携の上で協議していく」とした。三井物産のコメントは得られていない。

サハリン2は三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資。日本のLNG輸入量の約9%を占める。市場で調達するよりも安価なため、仮に権益をあきらめれば調達価格が上昇する可能性がある。資源エネルギー庁の幹部は、「代替LNGを市場で調達すると数兆円の追加負担が発生する」と説明する。

ロシアは新会社への出資条件など詳細を発表しておらず、日本政府はロシアからの情報を待って商社と本格的な調整に入る。資源エネルギー庁の同幹部は「新会社に関する詳細は問い合わせ中」と説明。G7は4月の首脳会談で対ロ制裁の一環としてエネルギーを含むロシア経済の主要部門への新規投資禁止を決めているが、「既存権益への投資という理解だ」と話す。

27.5%の権益を保有する英シェルは2月に撤退を発表したが、まだ売却先は決まっていない。

日本政府はロシア産LNG輸入の行方が不透明になる中、電力、ガス事業者間で余剰在庫を融通するなどの代替措置も進めている。また、オーストラリアを今週訪問した萩生田光一経産相が米豪のエネルギー相と個別に会談し、LNGと増産と安定供給を依頼した。萩生田氏はその後の会見で、「日本の立場への理解が示された。十分理解いただいたと思う」と述べた。

(竹本能文、清水律子、浦中美穂、杉山健太郎 編集:山口貴也、久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スペイン・バルセロナで再び抗議デモ、家賃引き下げと

ビジネス

欧州半導体業界、自動車向けレガシー半導体支援を要望

ワールド

焦点:ロシアの中距離弾道弾、西側に「ウクライナから

ワールド

豪BHP、チリの銅開発に110億ドル投資へ 供給不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中