最新記事

経済制裁

ロシアからの脱出急ぐ外国企業 サハリン2の展開に戦々恐々

2022年7月5日(火)10時12分

ラダウ氏は、サハリン2の事業移管命令が出される前の時点で、ロイターに「まだ、資産売却手続きに着手していないか、引き続き売却に懐疑的な企業は、さらに立場が厳しくなる。ロシアが外国企業にあっさりと撤退を許すことで得られる利益は何もない」と語った。

見つからない正解

西側企業の多くは、ロシアから撤退する取り組みの面で壁に突き当たっている。

例えば、米ハンバーガーチェーンのバーガーキングは今年3月、ロシア国内の店舗への支援を停止した。だが、今でも約800店が営業を続けている。法律専門家の話では、合弁形式のフランチャイズ契約の複雑性に問題があるという。

イタリア大手銀行・ウニクレディトは、スワップ取引を通じて一部資産を処分できた。しかし、インドやトルコ、中国などの国まで買い手候補の範囲拡大を迫られた。

ロシアのウクライナ侵攻から4カ月が経過して、外国企業がこれらの厄介な事態から解放されるための「正解」にたどり着いた兆しはほとんど見当たらない。事業を手放せたルノーやマクドナルドにしても、売却金額は事実上ゼロだった。両社は事業の買い戻し条項を盛り込むことにも同意している。

一方、パウリグのラダウ氏は事業売却に当たって買い戻し条項を入れないと決めた。「道徳倫理上の諸問題があまりに深刻で、われわれがロシアに戻ってくる余地はない」という。

銀行の関与なし

外国企業による今回のロシア資産処分に異例さがつきまとう原因の1つは、通常なら重要な役割を果たす銀行が一切介在していないことだ。

複数の関係者は、銀行側が制裁違反を恐れて関与を避けていると説明する。

そこで外国企業は、ロシア国内の法律専門家や、ロシアでの事業の買い手探しに精通する国際的なコンサルティング企業を頼り、売却手続きの正当性や制裁の順守、金銭的な信用を確保しようとしている。

ただ、ある企業からは、ロシアのアドバイザーの間でさえ、その都度出てくる助言が以前の内容と矛盾していると嘆く声も聞かれた。

それでもサハリン2を巡るプーチン氏の命令によって、この先どうなるかがより明白になってきた。撤退作業に苦戦を続けている外国企業幹部の1人は「ロシア政府はまもなく報復に動く。ガスだけでなく、他の分野でも」と警戒感をあらわにしている。

(Essi Lehto 記者、Anne Kauranen 記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:日本の成長率下方修正へ、利上げ1%で

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部に進入し「安全地帯」拡大 学

ビジネス

旧村上ファンド系、フジメディアHD株を買い増し 6

ワールド

与野党7党首が会談、トランプ関税への対応巡り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 2
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 5
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 6
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 7
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中