ロシアからの脱出急ぐ外国企業 サハリン2の展開に戦々恐々
ラダウ氏は、サハリン2の事業移管命令が出される前の時点で、ロイターに「まだ、資産売却手続きに着手していないか、引き続き売却に懐疑的な企業は、さらに立場が厳しくなる。ロシアが外国企業にあっさりと撤退を許すことで得られる利益は何もない」と語った。
見つからない正解
西側企業の多くは、ロシアから撤退する取り組みの面で壁に突き当たっている。
例えば、米ハンバーガーチェーンのバーガーキングは今年3月、ロシア国内の店舗への支援を停止した。だが、今でも約800店が営業を続けている。法律専門家の話では、合弁形式のフランチャイズ契約の複雑性に問題があるという。
イタリア大手銀行・ウニクレディトは、スワップ取引を通じて一部資産を処分できた。しかし、インドやトルコ、中国などの国まで買い手候補の範囲拡大を迫られた。
ロシアのウクライナ侵攻から4カ月が経過して、外国企業がこれらの厄介な事態から解放されるための「正解」にたどり着いた兆しはほとんど見当たらない。事業を手放せたルノーやマクドナルドにしても、売却金額は事実上ゼロだった。両社は事業の買い戻し条項を盛り込むことにも同意している。
一方、パウリグのラダウ氏は事業売却に当たって買い戻し条項を入れないと決めた。「道徳倫理上の諸問題があまりに深刻で、われわれがロシアに戻ってくる余地はない」という。
銀行の関与なし
外国企業による今回のロシア資産処分に異例さがつきまとう原因の1つは、通常なら重要な役割を果たす銀行が一切介在していないことだ。
複数の関係者は、銀行側が制裁違反を恐れて関与を避けていると説明する。
そこで外国企業は、ロシア国内の法律専門家や、ロシアでの事業の買い手探しに精通する国際的なコンサルティング企業を頼り、売却手続きの正当性や制裁の順守、金銭的な信用を確保しようとしている。
ただ、ある企業からは、ロシアのアドバイザーの間でさえ、その都度出てくる助言が以前の内容と矛盾していると嘆く声も聞かれた。
それでもサハリン2を巡るプーチン氏の命令によって、この先どうなるかがより明白になってきた。撤退作業に苦戦を続けている外国企業幹部の1人は「ロシア政府はまもなく報復に動く。ガスだけでなく、他の分野でも」と警戒感をあらわにしている。
(Essi Lehto 記者、Anne Kauranen 記者)