デフォルト認定のロシア国債、債権者はウクライナ戦線同様の膠着状態に
ロシアの外貨建て国債がデフォルト(債務不履行)と認定されたことで、債券保有者は異例の状況に直面している。写真はルーブル硬貨。2021年3月撮影(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)
ロシアの外貨建て国債がデフォルト(債務不履行)と認定されたことで、債券保有者は異例の状況に直面している。ロシア政府には資金があって返済の意思を示しているが、ウクライナ侵攻を巡る制裁によって実行できないという状況だ。
これらの国債は、ただでさえ異例の環境下にある。発行体のロシアが仕掛けた戦争は終息の兆しが見えず、同国は国際金融制度から切り離されている。
残高400億ドル近くに上るロシア外貨建て国債の一部を保有している投資家が、今後直面し得るシナリオを以下にまとめた。
アクセラレーション
債務者が債券の契約を破った場合、債権者は「アクセラレーション」と呼ばれる一括返済を要求できるが、その発動には規則がある。
2026年および36年償還のロシア国債の条件を見ると、発行残高の最低25%を保有するグループが「デフォルト」事由とアクセラレーションを宣言する必要がある。この宣言により、債券保有者は償還期日にかかわらず全残高の返済を要求できる。
ただし、未償還債券の元本総額の「最低50%」を保有する債権者が反対票を投じれば、これを覆すことが可能。同様に、デフォルト事由宣言も撤回できる。
今回問題となった2つの債券について、外国人投資家と国内投資家それぞれの保有比率は明らかになっていない。ロシア国債全般についても同様だ。
訴訟
国債のデフォルトを巡ってロシアを提訴しようとしても、一筋縄では行かないだろう。債券の条件が異例で、あいまいな場合があるからだ。特にロシアが、2014年のクリミア半島併合と18年の英国でのスパイ毒殺未遂を受けて糾弾された後に発行された国債はやっかいだ。
例えば債券は英国法の適用を受けるが、多くの債券は、どの管轄区域で係争を処理すべきかが明記されていない。
このため、米バージニア大学のミトゥ・グラティ法学教授によると、「ロシアはモスクワの裁判所に持ち込むが、債権者はロンドンかニューヨークで提訴しようとする」といった事態も考え得る。