貨物船不足で解体前の老朽船賃料まで高騰 世界的インフレ助長も
新型コロナウイルス対策の厳しい規制措置に起因する世界貿易の混乱に新造貨物船不足が重なり、本来なら解体されるはずの老朽船の用船料(賃料)が記録的水準に達している。写真は中型貨物船シナジー・オークランド。ユーロシーズ提供(2022年 ロイター)
新型コロナウイルス対策の厳しい規制措置に起因する世界貿易の混乱に新造貨物船不足が重なり、本来なら解体されるはずの老朽船の用船料(賃料)が記録的水準に達している。海上輸送コストの高止まりは、この先何年も世界的なインフレを助長する恐れがある。
こうした老朽貨物船の引き合いの強さにつけ込む形で、船主側は3─4年の長期用船契約を相次いで確保している。建造中の新造船が数百隻単位で就役する時期まで、消費者が高騰する海上輸送費用のツケを背負わされる結果になるかも知れない。
例えばキプロス船籍の中型貨物船「シナジー・オークランド」(積載可能量は20フィートコンテナで4200個強)の場合、所有者のギリシャ企業ユーロシーズは2019年、当時で既に船齢が10年に達していた同船を1000万ドル(13億6000万円)で購入した。ところが世界の貿易活動が一挙に不安定化した昨年、この船はわずか100日間の契約で2100万ドルを稼ぎ出したのだ。この規模の船としては1日当たりの用船料は過去最高となった。
シナジー・オークランドはさらに短期契約で約1000万ドルを得た後、5月に6100万ドルで4年間の定期用船契約が結ばれた。つまり3年前のユーロシーズの購入価格の6倍以上のリターンだ。
ユーロシーズのパリアロス最高総務責任者はロイターに「市況が上向く中でほぼ完璧な運用ができた。コンテナ市場の歴史でこうした事例は今まで見たことがなかった」と語った。
海運調査会社クラークソンズ・リサーチによると、世界のコンテナ輸送量は18年に5.6%、19年に4%伸びた後、パンデミックが起きた20年も2.9%増加した。
しかしロックダウン(都市封鎖)期間中に消費財の需要が急拡大した上に、港湾で貨物処理が滞って想定より長く船舶が足止めされ、さらに新環境基準順守問題を巡る不透明感との兼ね合いなどから新造船の供給が鈍化した影響で、貨物船需給が引き締まり、用船料が高騰した。