訪日観光客受け入れ、ゆっくりと再開 入り混じる期待と不安
日本がおよそ2年ぶりにインバウンド、訪日外国人観光客の受け入れを解禁する。写真は浅草で2020年10月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)
日本がおよそ2年ぶりにインバウンド、訪日外国人観光客の受け入れを解禁する。観光業界からの要望や、水際対策の緩和を進める世界的な潮流に背中を押された形だが、新型コロナウイルス感染再拡大にもつながりかねず、参議院選挙を控えて世論に敏感な岸田文雄政権は入国者数を1日2万人に限定する。本格的な再開にはなお時間がかかりそうで、成長戦略として政府が今も掲げる2030年までに年間6000万人という目標の達成は遠い。
緩慢だった政府の動き
東京スカイツリーを眺めながら隅田川沿いや雷門前を走る浅草の観光名物、人力車もこの2年は厳しい毎日だった。コロナ前は平日や閑散期を中心に外国人が主要客の一部だったが、流行が始まってからは激減。「数少ない地方からの観光客に対して、なんとかやってきていた」と、人力車を使った観光案内事業を手掛けるライズアップの及川唯・統括責任者は言う。今年に入って国内の観光客が増え始めたというが、「浅草の町に外国人が早く戻ってきてほしい。そのほうがにぎやか。いろいろな国の方が、浅草寺でお参りして、お酒飲んで、というのが浅草らしい良い景色だった」と及川氏は語る。
日本は6月1日から1日当たりの入国者数を1万人から2万人へ引き上げる。10日からは添乗員付きパッケージツアーを対象に外国人観光客の受け入れを再開する。コロナ禍に苦しんできた観光業界にとって、インバウンドの再開は長く待ち望んだ決断だった。日本旅行業協会(JATA)の高橋広行会長(JTB会長)は5月27日、「国際交流の再開に向け大きく前進した」と歓迎した。
ピークの2019年に3188万人まで拡大した訪日外国人観光客は、21年には25万人へと一気に落ち込んだ。彼らが日本で消費する金額も4兆8135億円から1208億円に激減した。JATAは政府や与党に入国制限緩和に向けた要望を10回以上提出したが、ある観光会社の役員は「(政府の)動きは鈍かった」と語る。
厳しい水際対策を取った岸田政権下、コロナの感染者は減少傾向が続いた。参院選が今夏に近づく中、マスク着用などコロナ対策への意識が異なる外国人が入国して感染が再拡大しかねないことを懸念していたようだと、この役員は陳情を続ける中で受けた感触を振り返る。