日本株に「悪い円安」は未発生、ドル高止まる時が危険
海外投資家は同期間に日本株を3143億円売り越しているが、特段売りが膨らんでるわけではない。4月だけをみると、8164億円買い越しだ。ドル高/円安の進行でドル建て日経平均は2020年6月15日以来の安値に沈んでおり、割安感からの「安値拾い」が出た可能性があるとみられている。
しかし、グローバル投資家は世界景気に対し悲観な見方を強めている。バンク・オブ・アメリカの4月ファンドマネジャー調査によると、世界の景気見通しは過去最低水準に落ち込んでおり、「今後の株式配分の引き下げ余地を示唆する」と同調査では指摘。波乱余地は依然大きい。
ソフトランディングは可能か
日本株にとって下落リスクが高まるのは、円安が進んでいる間ではなく円安が止まる時だ。いまのドル高/円安のドライバーは日米金利差。逆資産効果が懸念されるような株安が発生すれば、米利上げ観測が後退し円安は止まる可能性が大きいが、米株と連動性の高い日本株も大幅安となる恐れが強まる。
3─4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では22年ぶりに0.50%ポイントの大幅利上げを決めた。マーケットは、警戒していた0.75%ポイントの利上げ可能性が後退したとみていったん金利低下・株高に動いたが、5日の市場では反転した。
声明文には「FOMCはインフレリスクに非常に注意を払っている」という1文が追加された。米連邦準備理事会(FRB)の目標の3倍近い水準にあるインフレ率が家計に及ぼす影響についてパウエル議長は「極めて不快」と述べており、6月と7月の会合でも大幅利上げが決まる見通しだ。米金利上昇を震源とした市場波乱のリスクは依然大きい。
米株が底堅い間は利上げを続け、急落すれば利上げを止めて、ソフトランディングにFRBは持ち込めるのか──。「そうした芸当ができるのかは極めて不透明だ。株価は一度下がり始めると、何をしても止まらなくなることはしばしばある」と、三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏は警戒する。
米ダウは4月以降、1000ドルを超える下落を3度記録するなど不安定さを増している。リスクオフの円買いはすっかり影を潜めたが、リスクオフの日本株売りはまだ「健在」だ。
(伊賀大記 編集:田中志保)
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