日本株に「悪い円安」は未発生、ドル高止まる時が危険
足元で進む円安と日本株の相関性は、今のところはっきりしない。(2021年 ロイター/Shohei Miyano)
足元で進む円安と日本株の相関性は、今のところはっきりしない。マーケットでも日本経済に対する円安の功罪について議論が分かれており、株価の材料としてはほぼ中立。日本株全体でみて「悪い円安」が発生している様子はない。相関性が高いのは米株であり、米株が大きく下落することで米利上げ観測が後退しドル高/円安が止まる時が日本株にとって危険な時間帯となりそうだ。
TS倍率は足元上昇
対ドルで円安が急激に進み始めたのは3月から。インフレ高進で米利上げ加速観測が強まり、日米金融政策の方向性の違いが鮮明化。日本の経常収支赤字化(1月)なども材料視され、115円付近だったドル/円は約2カ月で15円以上の円安が進んだ。
その間、日本株は3月後半までは円安・株高の関係になっていたが、4月に入ってからは円安・株安になっており、相関性は逆転している。ドル/円が120円を超えてから円安・株安のトレンドとなっており、この辺から「悪い円安」が発生したとの見方も聞かれるようになった。
しかし、TOPIXをS&P500で割ったTS倍率でみると、足元はむしろ上昇している。水準自体は依然低いものの、4月以降の日本株の対米パフォーマンスは向上。先進国23カ国と新興国23カ国の大型株と中型株を合わせたMSCIのACWI指数との比較でもTOPIXは上昇している。
日本株との関連性が高いのは、ドル/円よりも米国株や世界の株価だ。「市場のリスク選好度、もしくは世界の景況感に連動して日本株は動いている。円安は業種で影響が異なっているが、日本株全体をみれば今のところプラスに働いている」と、ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏は指摘する。
キャピタルフライトは見られず
通貨価値の下落である円安を嫌って、日本の投資家が外国の株式や債券に資金を移している様子も見られない。3月から4月23日までの対内対外証券投資(財務省)では、日本居住者による対外株式・ファンド投資は、約1兆3000億円の処分超(売り越し)。中長期債も約4兆円の処分超だった。
ただ、国内投資家が日本株を選好しているわけではない。現物と先物を合計した日本株売買(東証・大取)では、3月から4月第3週までを累計すると、個人投資家は1374億円の買い越しにとどまっている。