中国電力が自社の送電網と切り離した「太陽光発電・駐車場」を作ったわけ
広島県立広島産業会館に設置された完全自立型EVシェアリングステーション Courtesy of Panasonic
<太陽光パネルが屋根のように設置された「ソーラーカーポート」を使った実証事業が広島県で始まった。ある意味で自己否定とも言えるような取り組みだが、その狙いは?>
広島市の中心部にあるコンベンション施設、広島県立広島産業会館の駐車場に4月上旬、太陽光パネルが屋根のように設置された「ソーラーカーポート」が設置された。
中には日産リーフとマツダMX-30 EV MODELと、違う車種の電気自動車(EV)が2台。カーポートの脇のデジタルサイネージでは太陽光発電量がリアルタイムで表示され、蓄電状況も把握できるようになっている。
中国電力が旗振り役となって始まった、実証事業の「完全自立型EVシェアリングステーション」である。
「完全自立型」とはすなわち、EVに充電するこの施設がどことも繋がっていないことを示す。中国電力の電力系統から完全に分離・独立しており、太陽光発電と蓄電・制御システムのみで運用される。
電力会社である中国電力にとって、ある意味で自己否定とも言えるような事業だ。中国電力から昨年この話を聞いたときは「耳を疑った」と、パナソニックでスマートエネルギー事業に携わる西川弘記氏は振り返る。
カーボンニュートラルの実現のため、環境省が提唱する「ゼロカーボン・ドライブ」。太陽光や風力などの再生可能エネルギーとEVやプラグインハイブリッド車を組み合わせ、移動時の脱炭素化、すなわち走行時の二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする取り組みだ。
これはなにも自動車メーカーだけの課題ではなく、中国電力では昨年8月、契約した企業の敷地内にEVステーションを設置し、複数の企業と周辺住民とでEVをシェアするカーシェアリングサービス「eeV(イーブイ)」を開始していた。
EVは車体自体が高額なうえ、給電する環境を整えるための負担も大きい。そこで、車両の効率的な利用と費用負担の分散化を目的に事業化したサービスだという。
この「eeV」を発展させる形で、広島県の協力を得て開始したのが今回の「完全自立型EVシェアリングステーション」実証事業だ。複数の企業と周辺住民とでEVをシェアするシステムはそのまま、パナソニックが開発したソーラーカーポートを組み合わせた。
しかし、完全自立型となると、停電や蓄電量が足りなかったときのリスクがあるのではないか。車2台分の充電を賄う小規模な分散型発電所であるソーラーカーポートで、EVのシェアリングサービスを始める意義とはなんだろうか。