世界最大の自動車市場の中国 EV化進み国内勢が躍進、テスラすら歯が立たず
日産自動車の内田誠社長はロイターとのインタビューで、一部の外車ブランドは3、5年以内に中国市場から消えかねないとし、中国メーカーのEVの品質は日進月歩の勢いだと語った。
内田社長は、中国市場は多くの変化が起こると見込まれるため、状況を注視していくと説明。デザインや開発、新型車の投入を機敏に進めていかなければ取り残される恐れがあると警戒感を示した。
ハイテクネーティブ
上海のコンサルティング会社、オートモビリティを率いるビル・ロッソ氏は、世界的ブランドは中国EV市場のシェアが20%に満たないため、早急に状況を転換する必要があると指摘する。ロッソ氏はクライスラーの元幹部だ。
クライスラーの幹部だったロッソ氏は「中国ブランドがEV競争を制しつつある」と指摘。「四輪の上に乗ったスマホ」さながらのEVを求める消費者の流れは止まらないとみられ、「ハイテクネーティブではない」老舗メーカーはついていくのに苦心していると説明した。
過去20年間、VWとともに中国市場のトップに立ってきたGMは今、大都市の若い消費者の獲得に注力している。しかし、事情に詳しい関係者2人によると、今のところGMのEVはそっぽを向かれているのが実情だ。
GMはロイターの取材に対し、2025年までに中国でのEV生産能力を年間100万台に増やす予定だと回答。「ビュイック ベリート」のシリーズ、「シボレー メンロー」とも昨年から今年の第1・四半期にかけて「大きく販売が伸長した」としている。
アウトバーン並みのスピードは不要
VWは昨年はじめに中国で「ID.」シリーズの新世代車を導入したが、8万─10万台という昨年の販売目標を達成できなかった。今年の目標は16万─20万台だが、4月までに売れたのは3万3300台にとどまっている。
GMとVWの内部事情に詳しい人物によると、外資系メーカーのEVに関する一番の懸念は、欧米市場を念頭にデザインされ、性能と耐久性に重点を置いていることだ。
「アウトバーン(ドイツ圏の高速道路)並みのスピード?ほとんどの中国の大都市は渋滞がひどく、時速60キロ以上さえ出せない日が多いというのに」とこの人物は語った。
VWは、中国のNEV需要は「スマートカー」コンセプトと強く結びついているとし、同国でソフトウエアを筆頭とする研究開発に投資すると表明。「当社は2030年までにEV市場でもリーダーになりたい。つまりVWが将来も中国ナンバーワンの座をしっかり維持できるようにしたい」とした。
上海の土木技師、リー・フアユアンさんは昨年、保険料込みの29万元でBYDのセダン型EVを購入したが、日本車やドイツ車は真剣に検討しなかった。
「米国のブランドだとテスラしか目を引かない。私から見れば、他のブランドは比較対象にすらならない」とフアユアンさんは語った。
(Norihiko Shirouzu記者)
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