材料豊富で止まらぬ円安 日銀YCCレンジ拡大でも効果薄か
日本の当局者から連日のように「口先介入」が行われているが、効果は限定的。実際に、ドル売り・円買いを行う為替介入は難しいとの見方が市場には多いためだ。
政府短期証券(FB)を発行し円資金を調達すれば、資金面ではほぼ無制限に行える円売り介入と違い、円買い介入の場合は、外貨準備高の量(3月末時点で1.35兆ドル=約174兆円)が事実上の円買い介入の限界となる。インフレに悩む米国の理解も得にくいとみられている。
YCCレンジ拡大では効果薄か
こうした中、市場の注目は27─28日の日銀金融政策決定会合に集まる。三菱UFJ銀行のチーフアナリスト、井野鉄兵氏は「日銀が何もしなかった場合はドル/円の跳ね方が大きくなる可能性がある」と警戒。1ドル130円を超えた場合、132円も視野に入ってくるとみている。
黒田東彦日銀総裁は18日の衆院決算行政監視委員会で、円安のマイナス面にも考慮が必要と指摘したが、「バランスシートの縮小や政策金利引き上げは可能だが、今その状況でない」と発言しており、市場では利上げなど大きな政策変更の可能性は低いとみられている。
政策の微修正の可能性があるとされているのが、YCCにおける10年債金利の許容レンジの引き上げだ。米国だけでなくドイツなど欧州でも金利は大きく上昇しており、「国債の市場機能を維持するために現在の上下0.25%から拡大させるとの理屈は通りやすいのではないか」(国内証券)という。
ただ、微修正では、0.50%を含む複数回の利上げが織り込まれている米金利との差を縮めるのは難しい。
野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は、日銀が許容レンジを例えば上下0.5%に拡大した場合、もしくはレンジを撤廃した場合でも、現在の米金利から推計される10年債金利の上昇めどは0.33%程度と指摘。この程度であれば、日米10年金利差縮小による円高効果は1円程度しかないと試算している。
日銀が政策修正を行えばサプライズ感が出やすく、円安はいったん止まるかもしれない。しかし、インバウンド収入増加による貿易収支の改善など、日銀が金融引き締めに向かえると市場が期待できるようなファンダメンタルズの変化がなければ、「歯止め」は短期間の効果にとどまる可能性が大きい。
伊賀大記
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