最新記事

日本経済

材料豊富で止まらぬ円安 日銀YCCレンジ拡大でも効果薄か

2022年4月20日(水)17時54分

円安が止まらない。ドル/円は129円台に上昇し、2002年4月24日以来となる130円も視界に入ってきた。写真は都内で2013年4月撮影(2022年 ロイター/Toru Hanai)

円安が止まらない。ドル/円は129円台に上昇し、2002年4月24日以来となる130円も視界に入ってきた。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め姿勢を強める一方、日銀は指し値オペを実施し、金利上昇を抑制する中、日米金利差との連動性が強まっている。貿易赤字など円売り材料は豊富で、日銀が10年金利の許容レンジを拡大したとしても円高効果は限定的との見方も出ている。

連動が2年から10年に

為替はマネーフローや市場のリスク心理など様々な要因に影響を受けるため、2国間の金利差だけに反応するわけではない。2021年ごろまでは連動しない期間も多かった。しかし、足元のドル/円は日米金利差との連動性が非常に高くなっている。

「これまで米2年債利回りと連動性の高かったドル/円は、今は10年債利回りとの相関性が強まっており、米10年債利回りの上昇がドル/円を押し上げた」と、T&Dアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャー、浪岡宏氏は指摘する。

10年金利差との連動が高まっているのは、市場参加者が日米中央銀行の姿勢の違いに注目しているためだ。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は18日、FRBが政策金利を年内に3.5%まで引き上げるとの見方を改めて示し、米10年債利回りは一時2.98%と、2018年12月以来となる3%台に接近した。

一方、日銀は19日、10年債を0.25%で無制限に買う指し値オペを再び実施した。円安材料と受け止められるリスクもあったが、金利上昇抑制の姿勢を改めて示した格好だ。

為替の所管は財務省であり、日銀は物価目標を達成、もしくは不安定な経済を支えるために現在の金融緩和政策を遂行しているだけとも言えるが、マーケットの注目がそこに集まる限り、ドル買い・円売り圧力は弱まりにくい。

「口先介入」では効果限定的

貿易赤字など、その他の円安材料も多い。日本の3月貿易収支は4124億円の赤字と、ロイターの予測中央値1008億円を大きく上回った。8カ月連続の赤字で、2021年度の貿易収支は5兆3749億円の赤字と、14年度以来の大きさとなった。

1月に1兆円を超える大赤字になった経常収支は3月以降、黒字化に向かうとの予想も出ている。しかし、実際にマネーフローを伴う貿易収支を経常収支以上に為替の大きな要素として重視する市場参加者は少なくない。円安は原油や石炭など原材料の輸入価格をさらに高めるため、貿易赤字とも連動しやすい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中