【ゼロから分かる】「円安=株高」が崩れたのはなぜ?
コロナ禍が為替と株の相関を変えた
新型コロナウイルスの感染拡大により、為替の動きにも変化が出てきています。たとえば、「リスク回避の円高」という現象が、コロナショック時には起きませんでした。
コロナショック前までは、「マーケットでの不安心理が高まると日本の円が買われる」というのは、市場関係者の間で常識になっていました。これまで世界的な株安局面では、円高が進む場合が多かったからです。
しかし、2020年3月のコロナショックでは、株安と円安が同時に進みました。感染拡大による世界的な株価暴落でお金の流れが滞り、金融取引や貿易の決済資金を確保できなくなるという恐怖心から、国際間の決済で最も使われる米ドルの確保が進んだからです。
そして、「有事のドル買い」という相場格言が使われました。
■日米格差で円安・株価停滞に
2021年は、円安と株価停滞という現象が起こっています。11月になると円相場は115円台にまで値下がりし、2017年3月以来、4年8か月ぶりの円安・ドル高水準となりました。
背景にあるのは、日米間の金利差の拡大です。
FRB(連邦準備制度理事会)が11月3日に、コロナ対策として続けてきた量的緩和の規模を段階的に縮小する政策転換(テーパリング)を決定。アメリカではインフレ(物価上昇)懸念も出ていることから、利上げも前倒しされるのではないかという見方から、米10年債利回りも1.6%台まで上昇しました。
それに対して日本の長期金利は、日銀の金融政策によって0%程度に抑えられています。また、今後も日銀は大規模な金融緩和を維持し、低金利の状況が続くとみられています。このため、日米の金利差の拡大により、円を売ってドルを買う動きが強まっているのです。
一方、日経平均株価は、9月14日に30,795.78円の年初来高値をつけたものの、その後は伸び悩んでいます。円安による輸入費用の増加が企業や経済に与える打撃に、注目が集まってきているのです。
たとえば、山崎製パン<2212>は、2022年1月からパンの価格を引き上げると発表。小麦の輸入価格が大きく上昇しているからです。足元では原油高も進んでいるので、円安と原油高によってコスト増となり、国内経済への打撃はより大きくなると見られています。