【ゼロから分かる】「円安=株高」が崩れたのはなぜ?
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<かつては「円安=株高」という構造があったが、近年はその相関が見られなくなっている。円安が急速に進んでいる今だからおさらいしておきたい、為替と株価の関係>
為替と株式市場の関係
為替レートは輸出企業や輸入企業の株価に影響を与えます。輸出企業を考えた場合、円安・ドル高になれば、業績にとってプラスの要因になるからです。
たとえば、自動車1台を2万ドル(米ドル建て)で輸出した場合、1ドル=110円のときと1ドル=90円のときでは、受け取る外貨は同じでも、円ベースでの価値は異なります。
・1ドル=110円のとき:売上 220万円(2万ドル×110円)
・1ドル=90円のとき:売上 180万円(2万ドル×90円)
一方、ガスや電力・化学などの輸入企業は、円高・ドル安になれば支払うコストが円ベースで低下するので、円高のほうが業績にとってプラスになります。
円安=株高の構図が崩れた理由
為替と株価の関係を考えるとき、「円安=株高」という説明をよく耳にします。
日本には自動車などの輸出企業が多く、円安になれば企業業績が向上し、株価も上がるという経験則があります。とくに2012年に始まったアベノミクス以降、円安により日本企業の輸出が増え、業績が改善するとの期待で日本の株高につながりました。
しかし、実際は輸出数量が増えず、市場では「円安=株高」という構図が崩れてきているのです。その背景にあるのが、日本企業の生産体制の変化です。2000年代まで、家電などは国内生産が中心で、円安になれば海外向け製品を値下げして、輸出数量を増やすことができました。
しかし2010年代以降、半導体製造装置や画像センサーなど、高付加価値の受注生産が中心になりました。そのため、価格よりも性能が重視され、安ければ多く売れるわけではなくなったのです。
■輸出の為替感応度は「ゼロ」に
円相場の変動が日本の輸出全体にどう影響しているかを表す「輸出の為替感応度」というものがあります。日銀の分析によると、2000年代半ばは、米ドルに対して10%円高になると、輸出は3%程度減っていました。
ところが、2017年にはほぼ0%となり、円安・円高と輸出の増減はほぼ無関係になったのです。黒田総裁も2021年10月の記者会見で、「円安で輸出が増加する度合いは、以前よりも低下している」と述べています。