液晶テレビ、スマホの次はEVか 韓国EVが欧州で急速にシェアを広げる理由
韓国車の日本における評価は、マーケットから撤退した経緯もあって、残念ながら高いとは言えない。あるいは、日韓間の外交上の懸案などを原因とする交流の冷え込みから、韓国メーカーにとって日本が「売れない市場」になった事情もある。
しかし、英国で実際にレンタカーとして乗ってみたら、加速性能や乗り心地の点で、日本車と比べ「乗ってて困るほどの違い」は見つからなかった。むしろ、「そこそこの値段で借りられてよく走る」という手ごろな性能の良さに好感が持てたほどだ。
英国もかつては日本のように、EVが持つ航続距離への懸念、充電場所探しの面倒などから、フルプラグインタイプのEVは敬遠気味だった。英国市場におけるEVは、日産の「リーフ」をはじめ、BMWの「i3」、はたまた三菱の「i-MiEV(欧州向けモデルはプジョー iOn、シトロエン・C-ZERO)」などが先行モデルとして販売されていたが、普及が大きく進むまでには至らなかった。
「廉価版EV」が意識高い系の中間層に刺さる
それが、テスラの成功で人々の目は一気にEVへと向かった。英国における2021年の乗用車販売台数統計を見ると、ガソリン、ディーゼル車を含む全体で、テスラの「モデル3」がランキングの2番手にまでのし上がっている。EVに限ったランキングでは圧倒的なトップに輝いた。
ただ、車両価格が最低でも4万2500ポンド(英国での販売価格、約650万円)と高価で、いくら政府が補助金を打っても庶民にはやはり手が出づらい。
そうした市場に、3万ポンド(460万円)前半という廉価なEVを送り込んだのが韓国メーカーだ。EVが欲しいと考える「環境への意識が高い中間層」への訴求効果は抜群だったと言えようか。
「最も売れているEV」であるテスラには及ばないが、昨年の統計を見ても韓国製EVの躍進は目覚ましい。「モデル3」が3万4783台だったのに対し、Kiaの「e-niro」とヒョンデ「Kona」を合わせた数字は1万9470台に達している。
【英国における環境車の販売台数の伸び(2021年の前年比)】英国自動車製造販売協会(SMMT)より
・電気自動車(EV)......76.3%増
・ガソリンハイブリッド車(HEV)......34%増
・プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)...... 70.6%増
・マイルド・ハイブリッド車(mHEV)......ディーゼル車が62%増、ガソリン車が66.2%増
テスラばかりのロンドンで韓国EVも混じるように
21年の英国の新車販売台数は、全体の17.5%がEVまたはPHEVとなっている。つまり、新車の6台に1台はプラグインで動力を得るクルマというわけだ。これにシェア9.0%に達するハイブリッド車と合わせると、新車市場の26.5%が内燃機関(エンジン)を使わないクルマになっている。
ロンドンの街を歩いていると、韓国製EVのシェアが急激に伸びていることが肌感覚でも分かる。ロンドン中心部と同市の空の玄関・ヒースロー空港とを結ぶ国道沿いでEVの普及具合を見るべく、走行台数を数えたことがある。