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液晶テレビ、スマホの次はEVか 韓国EVが欧州で急速にシェアを広げる理由

韓国ヒョンデのEV「IONIQ 5」

ロンドン西郊外のHyundai(ヒョンデ)ディーラーには、納車待ちの「IONIQ 5」(左)が停まっていた(撮影=筆者)

欧州でフォルクスワーゲンの牙城に食い込む

韓国の自動車メーカーの電気自動車(EV)が欧州で絶好調だ。Hyundai(ヒョンデ)や同社グループ系列のKia製を中心に破竹の勢いでシェアを広げ、「自動車業界、驚きのシャッフル」「韓国EV、テスラよりも売れそう」と伝える記事さえも出てきた。

韓国車に馴染みが薄い日本のユーザーにとっては「なぜ?」という疑問が湧くかもしれない。実際のところ欧州でも、韓国製のクルマの存在感は2021年に入るまでそれほど大きくなかった。

欧州全体では、独フォルクスワーゲン(VW)が圧倒。フランスやイタリアでは、自国の自動車メーカーが幅を利かせ、自国とその周辺の購買者が持つ「愛国心」に訴えながらシェアを確保してきた。一方、日本や韓国のメーカー各社は米国ではそれなりのシェア獲得に成功してきたが、欧州では「存在自体は知られている」ものの、欧州メーカーと比べるとそこまでのシェアは取れずにいた。

しかし、そんな業界図に変化が生じている。英国における2021年のEVモデル別販売台数では、「Kia e-Niro」がフォルクスワーゲン「ID.3」を上回り2位につけた。登録台数は前年同月比でヒョンデが81.5%増、Kiaが67.5%増と、日本メーカーがいわば足踏み状態にあるEV市場で、英国や欧州市場で地位を築きつつある。

新型「IONIQ 5」が北米、欧州で発売

ヒョンデの「IONIQ」は、環境車としてすでに各国の市場で着実に販売実績を上げていた。2016年の初代IONIQは、同じプラットフォームを使ったEVとプラグインハイブリッド(PHEV)がある。日本では販売当初から「トヨタのプリウスに酷似」という批評も聞かれるが、HEV車としてプリウスが不動の地位を築いている欧州では、IONIQとプリウスを混同する声は聞いたことがない。

新型の「IONIQ 5(アイオニック・ファイブ)」は、2019年のフランクフルトモーターショーでお披露目されたのち、2022年に入ってから北米と欧州市場に本格登場した。ボディデザインは、韓国の独自生産車として普及した「ポニー」を踏襲したとするものの、実車を見ると薄いヘッドライトとクラムシェルフードのフロント形状が印象的だ。

後述するが、このIONIQ 5は日本でも5月に発売される。最低価格は479万円(金額は税込み、補助金など含まず)。

「後発EV」がどうやってシェアを広げたのか

後発EVにもかかわらず、韓国メーカーはいかに欧州マーケットに食い込んだのか。まず、Kiaがスロバキアに2004年、続いてヒョンデがチェコに2008年、いずれもかつての東側陣営に製造拠点を建てた。ここを拠点に安価な労働力を使って欧州全体に販売を図った。VWなどの小型車に比べて廉価だったものの、個人購入よりもむしろレンタカーやリース向けといった「フリート販売」で実績を積んでいった。

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