最新記事

ウクライナ情勢

ロシアに近いBRICs各国、対ロ制裁受け「脱ドル」模索 人民元に追い風か

2022年3月1日(火)17時14分
人民元の紙幣と硬貨

ウクライナに侵攻したロシアに対して西側諸国が制裁を強める中、ロシアと友好関係にある新興諸国は、同国と貿易・金融取引を続けるための迂回ルートを探っている。写真は人民元の紙幣と硬貨。2月撮影(2022年 ロイター/Florence Lo)

ウクライナに侵攻したロシアに対して西側諸国が制裁を強める中、ロシアと友好関係にある新興諸国は、同国と貿易・金融取引を続けるための迂回ルートを探っている。

かつてBRICs(ブラジル、インド、中国、ロシア)と呼ばれたロシア以外の国々は、制裁にひっかからないよう慎重に事を進めている。そうした中で、ドル基軸通貨体制とは別の、中国を中心とする「並行的な」金融システムの萌芽が目に見えるようになった。

米欧はロシアの大手銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除したのに加え、同国の6400億ドルに上る外貨準備の使用を制限する措置を発表した。

一方で中国、インド、ブラジルの3カ国がロシアとの経済関係維持に前向きな姿勢を示し、ウクライナ危機を巡って世界的に深い亀裂が走っていることを印象付けた。その結果、国際貿易におけるドルの支配的地位が浸食される恐れもある。

中国の企業と銀行は今、制裁による中ロ関係への影響を抑えるために奔走しており、ドルに代わって人民元での決済が増えている。ロシアを国際金融システムから締め出すことを狙った西側の制裁により、中ロの商業的な結びつきが深まる可能性もある。

インドでは、ロシアからの肥料供給が途絶えるとの懸念が台頭。政府と銀行の関係者らによると、インドの国営銀行にロシアの銀行・企業のルピー口座を開設させ、貿易決済に使う計画がある。

ブラジルのボルソナロ大統領は、ウクライナ問題に関してブラジルは中立の立場を取ると述べた。

中国・浙江省商工会議所のデン・カイユン会頭は、中国とロシアは5年前に「脱ドル化」に着手しているため、SWIFTを使わずに取引をすることは大きな問題にならないと述べている。

デン氏は「大手銀行では最近、元とルーブルで決済するのが普通になった。われわれビジネス界の人間は既にそれに慣れている」と語り、ロシア国民の間で人民元の人気が高まっていると付け加えた。

SWIFTの代替手段

制裁を機に、ロシアと中国の企業の間では、ロシアに子会社を持つ中国の銀行に口座を開く動きが広がっているという。 

モスクワで活動する弁護士である中国企業の代表者は、この動きについて「SWIFTが唯一の決済システムというわけではない。このルートが遮断されれば、経済人は代替手段を探す必要がある」と説明した。

「輸出業者は今、(ロシアとの)決済通貨に元を好んで使うようになった」と中国国営銀行のある関係者は述べた。こうした取引の一部は先週までユーロかドルで決済されていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中