最新記事

ウクライナ情勢

ロシアに近いBRICs各国、対ロ制裁受け「脱ドル」模索 人民元に追い風か

2022年3月1日(火)17時14分

別の中国国営銀行の関係者は、西側の制裁の詳細がまだ明らかではないため、同行は状況を注視するとともに、顧客にはロシアとの貿易決済に元を使うよう勧めていると語った。

昨年上半期の時点で、既に中国の対ロシア輸出の28%が元で決済されていた。両国はドルへの依存を減らす取り組みを強化し、それぞれ独自の国際決済制度の開発を進めてきた。

今回の危機によって、その流れが加速するかもしれない。

ファウンダー・セキュリティーズのダン・コンユー氏は、SWIFTからロシア銀を排除する制裁は「脱ドル化を加速させる一里塚」になると指摘。「短期間でSWIFTに取って代わるのは難しいが、今回の出来事は長期的に元の国際化にとって大きな追い風になる」と語った。

広がる脱ドル化

脱ドル化の取り組みは、貿易に限った話ではない。

投資会社のカデラス・キャピタルは、ロシア・中国間の証券投資を後押ししてきた。マネジングディレクターのアンドレイ・アコピアン氏は、ロシア中央銀行が元建て資産への投資を増やしていることについて「ロシアの投資家の間で、人民元の人気を高める最良の方法だ」と賞賛する。

昨年6月時点で、ロシア中銀の外貨準備に占める元の割合は13.1%と、2017年6月のわずか0.1%から大きく増えた。ドルの割合は46.3%から16.4%に下がっている。

アコピアン氏は「貿易と投資に関して言うなら、両国が米ドルで取引しないことには大きな利点がある。米ドル建て取引は二重に換算する必要性に加え、昨今では他の難点もある」と話した。

だが、多くの中国企業は足元で、対ロ制裁による痛みを味わっている。ルーブルが急落し、貿易契約がほごにされているからだ。

ある弁護士は「今はだれもが既存のビジネスを維持すること、あるいは縮小することに専念している。新規ビジネスについて語る者はいない。中国の顧客を含め、あらゆる方面から聞こえてくるのは、そういう話だ」と述べた。

ジ・アジア・グループの上席顧問、ハンシェン・リン氏によると、西側の対ロ制裁に伴い、中国の銀行は取引相手から以前より厳しく精査されるようになる可能性がある。

「全ての中国の銀行は、米ドルを精算するグローバル銀行から、制裁に関係する相手先との取引に関わっていないか尋ねられるようになると覚悟している」とリン氏は説明。「中国の銀行が、制裁対象の取引と非制裁対象の取引をどう分離するのかが見どころだ」と語った。

(Winni Zhou記者、Andrew Galbraith記者, Samuel Shen記者 in 上海、Ma Rong記者 in 北京)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・ウクライナに「タンクマン」現る 生身でロシア軍の車列に立ち向かう
・ウクライナ侵攻の展望 「米ロ衝突」の現実味と「新・核戦争」計画の中身
・ロシア「暗殺リストを作成」ウクライナ侵攻後、反体制派やLGBTなど標的に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中