値上げしてもコスト高に追いつかず 苦戦する日本企業、来期の重しに
Jオイルの服部広専務も「南米の乾燥気候によるブラジル、アルゼンチン産の大豆の生産量の減少懸念から大豆相場が15ドルまで上昇してきており、現在の状況が長期化する場合には、さらなる改定(値上げ)はあり得ると考えている」と述べている。
パナソニックの梅田博和最高財務責任者(CFO)は4月以降に家電を順次値上げすることを、花王の長谷部佳宏社長は衣料用洗剤や紙おむつを3月めどに値上げする方針をそれぞれ決算会見で明らかにした。
消費者と小売りの反応
しかし、デフレがしみついてきた日本で、これ以上の値上げが消費者に受け入れられるかは不透明だ。BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏はこれまで日本の値上げを振り返って「エネルギーと食料以外は値上げできていない」と指摘する。
総務省が18日に発表した1月の全国消費者物価指数は、エネルギー価格の上昇を主因に5カ月連続で前年を上回った。賃金も相応に上がらなければ消費の減退につながる恐れがあるが、2月のロイター企業調査で春闘への対応を質問したところ、基本給を底上げするベースアップを予定している企業は3割強にとどまった。
装置産業でもあるビール業界は、一定数量を出荷することが収益確保の上で重要となる。サッポロホールディングスの岩田義浩常務は10日の21年12月期決算会見で、値上げが数量減につながることを懸念。「値上げして数量がきちっと確保できなければ、コストの回収ができない」と述べ、市場の動向を慎重に見極める考えを示した。
紙おむつなどの値上げを表明した花王は、原材料価格の上昇が22年12月期の損益に110億円、物流費上昇で60億円の影響があるとみており、値上げやコスト削減で吸収したい考え。長谷部社長は3日の決算説明会で「戦略的な値上げをし、TCR(コスト削減)をすること、これを業界のリーダーシップを取ってやりたい」と語った。
首都圏を地盤とする食品スーパーのオーケー(神奈川県横浜市)は、花王の方針に「ノー」をつきつけた。低価格販売が売りのオーケーは、花王の製品約500品目のうち、1月末から145品目の取り扱いを中止している。
(清水律子 編集:久保信博)

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