値上げしてもコスト高に追いつかず 苦戦する日本企業、来期の重しに

ほぼすべての発表が終わった今四半期決算は、原材料やエネルギーをはじめ、日本企業が直面するコスト高の激しさを浮き彫りにした。写真は千葉のスーパーマーケットで2020年5月撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
ほぼすべての発表が終わった今四半期決算は、原材料やエネルギーをはじめ、日本企業が直面するコスト高の激しさを浮き彫りにした。繰り返し値上げをしても吸収しきれず、業績見通しを下方修正した企業も少なくない。第2弾、第3弾、さらに来年度以降の値上げを模索する動きもみられるが、賃上げが見込みにくい中ではこれ以上の価格見直しは消費者に受け入れられず、来期業績の重しとなる可能性がある。
今期すでに5回値上げ
ニチレイは昨年11月、家庭用の冷凍食品を4―8%、業務用の冷凍食品と常温食品を3―10%値上げした。もともと輸入食材などが高騰していたところに円安が拍車をかけ、さらに原油高や新型コロナウイルス禍による世界的な輸送網の混乱が物流費も膨らませた。
巣ごもり需要などによる販売増やコスト削減といった増益要因もあるものの、11月の値上げではコストの上昇を吸収しきれず、同社は今月1日、2022年3月期の連結営業利益予想を10億円引き下げた。3月には家庭用冷凍農産品の一部を8―15%、4月には業務用冷凍食品の一部を4―10%値上げすることを計画している。
経理部長の大渕正氏は「一部の原材料については一段高、下がるものはないと見込んでいる」と説明。「まず自助努力で対応するが、吸収しきれない上げ幅となっているため、理解を得ながら価格改定を進めていく」と語った。
J─オイルミルズは、主な原料である菜種相場やパーム油相場の高騰や菜種新穀原料の油分低下による歩留悪化などで22年3月期中に5回の値上げに踏み切った。それもで3日、3月期の連結営業利益予想を26億円から5000万円へ引き下げた。八馬史尚社長は、「原料価格の上昇に対して価格改定が追い付いていないことが主な要因」とした。
当初280億円のコストアップを224億円の値上げで「打ち返す計画」(八馬社長)だった。しかし、コストの上昇幅が297億円に上振れたのに対し、値上げによる吸収分は203億円にとどまるという。
過去とは違うコスト上昇要因
過去のコスト高局面に比べ、今回は穀物相場や原油価格の上昇、天候不順、物流費や人件費の上昇、円安など複合的に要因が絡んでいるのが特徴だ。食料品だけでなく、公共料金、トイレットペーパーなどの家庭用紙、オンラインショッピングの発送に使う梱包資材、住宅設備機器など影響は広範に及んでいる上、来期まで続くとの見方が多い。
キリンホールディングス傘下のメルシャンの長林道生社長は2日に行った事業説明会で、船積みの際の引き渡し価格など輸入ワインを取り巻くコスト高は「各社、経営にインパクトのある数字になってきている」と発言。「まだ現時点では言えないが、状況を見ながら検討していきたい」と値上げに含みを持たせた。