社員が次々と辞めていく中小企業の3つの特徴
■評価について話し合う場を設ける
労働条件の不満については、人事制度の運用を見直すことから始めましょう。人事制度は"賃金"、"等級"、"評価"が三位一体になっている企業がほとんどかと思います。このなかで最も打ち手を投じやすいのが評価制度です。
まず、評価制度の運用実態を把握するようにしてください。人材流出の多い企業は、"評価面談を実施しない"、"評価が一方的"など、運用がきちんとなされていないケースがほとんどです。
特に本人のモチベーションを左右する評価結果を伝える場面では、以下の点に留意してください。
・評価結果をその根拠とともに伝える
・メンバーの評価を上げたいと考えていることを伝える
・次に活かせる具体的な改善ポイントを伝える
・一方的に伝えるだけでなく、本人の認識も確認する
人事評価は本人が最も身近な人事制度です。上司と評価についての認識を共有できるだけでも、本人のモチベーションに好影響をもたらすのです。
■経営者から全社員に向けて発信をする
多くの企業では期末には振り返りは行っていると思います。その際に、経営者から全社員に向けての発信は行っていますでしょうか? 一部の社員のみで行っていたり、経営者からの発信は行っていないという場合もあるかもしれません。
中小企業では、それぞれの社員が日々の業務に追われがちで、企業としてのこれまでの成果や今後のビジョンについて考える機会がもてないことも。このような状況では、将来性がないという不満につながりやすいでしょう。節目ごとに企業のトップである経営者自らが全社員に向けて発信を行うことで、社員は自分の行動を企業の成長とリンクして考えることができるのです。
全社員への発信の際は、未来志向の視点を盛り込むことよいでしょう。未来志向とは、"未来についてイメージすることでモチベーションを高く持つ"気質のことです。具体的には、以下の例のように、今期の結果を踏まえて、未来への連続性を示すことをおすすめします。
・「今期はここが反省点だ。だから来期はここを改善したい」
・「今期の業績は好調だった。ただ、足元の業績だけではく中長期のビジョンも忘れないでほしい」
全社的な振り返りの際に、経営者の方が未来志向の視点を取り入れて話すことで、企業や個人の将来性を社員に認識させることができるでしょう。
まとめ
人材流出は放置しておくと、退職者が退職者を呼ぶような"負の連鎖"まで事態は悪化してしまいます。
企業が退職者を減らそうとしている姿勢を見せることが第一歩です。まずは、人材流出が続く企業の特徴に心当たりがないかをチェックしましょう。そのうえで、該当することがあれば、本記事を参考に社員に寄り添った対策を講じてみてください。
【参考】
『2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要』/厚生労働省
『就職白書2020』/就職みらい研究
2021.10.01
[執筆者]
松本久美子
経営者兼フリーライター兼コンサルタント
早稲田大学卒業後、リクルートに入社。20年間、企業人事部に採用・人材開発・制度設計などHR全般のソリューションを提供。自身もマーケティング部門の管理職として、最大13名ほどのメンバーマネジメントを担う。現在は、産業心理や行動経済学の知見をもとにフリーで活動。個人では、スマトラ津波のドキュメント本やシニア再就職本など出版も多数。また、不動産投資家としても活動中。