香港金融界が人材不足 厳格な「ゼロコロナ」対策に嫌気、欧米の駐在員数千人離脱か
人材あっせん企業ウェルズリーのクリスチャン・ブラン最高経営責任者(CEO)は、この状況でもっぱら恩恵を受けているのがアジアの金融ハブとして競合するシンガポールだ、と指摘する。
「シンガポールを拠点とする銀行上級幹部はこれから増えていくだろう。今なら、シンガポールという選択肢を与えられた人の多くは、その方がいいと考えるだろう」とブラン氏。「すでにヘッジファンドやプライベートエクイティー会社ではそうした傾向が見られる。銀行でもそうなっていく」
香港当局は強気の見通しだが......
金融業界幹部や行政当局者の中には、もっと楽観的な見方もある。低い税率や法の支配、市場の自由が維持される限り、中国企業や富裕層にとっての香港の魅力は変わらないだろうという意見だ。
ゴー・キャピタル・パートナーズのケネス・ゴー社長は、今月開催されたカンファレンスで、「この街の国際的な雰囲気は、いくぶん変化するだろう。活気は続くとしても、これまでより中国的な性格を帯びるようになる」と語った。
香港金融管理局(HKMA、中銀に相当)は、パンデミック関連の課題が金融機関を悩ませていると認めた上で、それは「過渡的」であり、グローバル金融ハブとしての香港の地位を支えているファンダメンタルズは引き続き強力だとの見解を示した。
香港の証券先物事務監察委員会は、事業免許を得て活動する企業・個人の数は昨年末まで増え続けており、香港の魅力が裏付けられていると指摘した。
だが、他国からの駐在者の多くは状況の変化を待ってはいない。
あるグローバル規模の調査会社グループに所属し、5年以上にわたって香港に居を構えてきた金融アナリストは、ロイターの取材に対し、香港の国境が開放され、家族や友人に会えるようになるのを待ち続けてきた、と語った。
だが、変化の兆しが見えないため、今年第2四半期には米国に帰国することに決めたという。
「要するに、こちらは家族に会う必要があるのに、渡航規制が終わる見通しもなければ、そのロードマップやプランも示されない、ということだ」と彼は言う。「結局、待つのをやめて、脱出するのが唯一の選択肢だと悟った」
(Scott Murdoch記者、Kane Wu記者、翻訳:エァクレーレン)
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